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2021 年度 実施状況報告書

多言語イスラーム書からみる南部フィリピン・ムスリム知識人の知的営為とネットワーク

研究課題

研究課題/領域番号 20K01007
研究機関上智大学

研究代表者

川島 緑  上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (50264700)

研究分担者 菅原 由美  大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (80376821)
塩崎 裕子 (久志本裕子)  上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (70834349)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードフィリピン / ムスリム / イスラーム / 東南アジア / 知識人 / キターブ / 思想 / ミンダナオ
研究実績の概要

南タイ出身のイスラーム学者ダーウード・ファターニーによるマレー語著作『マンハル・アル=サーフィー』をテキストとして、4月3日、8月23日、9月20日に計3回、勉強会(オンライン)を開催し、東南アジアのイスラーム神秘主義思想の主要な観念である「存在の7段階」に関する基礎的知識の確認を行い、今後の比較研究の基盤となる基礎的理解を共有した。
科研17K03144(2019年度終了、代表者:川島緑)で着手した東南アジア・ムスリムの死生観・来世観の研究を発展させ、東南アジア学会大会でパネル「東南アジアのイスラーム書にみる「天国と地獄」:死生観および社会道徳観への影響」(代表:菅原由美、オンライン)を組織し、11月3日に発表者(菅原、久志本、川島)と討論者でプレ・シンポジウム(オンライン)を実施し議論を重ねた。大会当日のパネルでは、東南アジアのイスラーム圏のみならず、キリスト教圏や上座仏教圏の研究者も参加して活発な議論が行われ、多様な視点からのフィードバックを得ることができた。
また、本科研、および、上記科研17K03144の研究活動にもとづいて2点の英文図書を刊行し、これを通じて国際的な成果発信を行った。ひとつは、歴史的に南部フィリピンのムスリムと密接な交流を持つ、マレーシア・サバ州のイラヌン人コミュニティーにおけるイスラーム知識の伝達とその変容を検討した論文集であり、これは上智大学アジア文化研究所のOccasional Paperとして刊行された。もう一点は、フィリピンと同様、国民国家の宗教的マイノリティであるタイのムスリム社会におけるキターブの流通とイスラーム教育に関する論文集で、これは上智大学イスラーム研究センターのワーキングペーパーとして刊行された。
これらに加え、それぞれの研究参加者が本研究の成果を生かして研究会での口頭報告や講演等を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度前半は文献講読と勉強会を通じてイスラーム神秘主義思想の研究を進めることができた。本年度後半は、学会パネル等でこれまでの研究成果を報告し、外部の研究者を含めて議論を行い、研究を深化させることができた。さらに、当初の予定通り、2点の英文出版物を刊行し、それを通じて研究成果を国際的に発信した。
ただし、フィリピンでの海外調査は、新型コロナ感染による海外渡航制限のため、昨年度に続き実施できなかった。現地での感染が収束を待って、次年度以降に実施予定である。

今後の研究の推進方策

次年度以降も研究参加者の間で密接に連絡を取りつつ、文献講読を中心とする勉強会を継続するとともに、各自の研究課題に取り組み、その成果を研究会等で報告し外部の研究者からフィードバックを得つつ研究を進めていく。研究会や勉強会には、オンラインを引き続き積極的に利用する。
2022年度は以下の活動を推進する。昨年度開始したダーウード・ファターニー著『マンハル・アル=サーフィー』の講読を継続し、これを読了するとともに、その他の文献調査を通じて東南アジアの「存在の7段階」に関する研究を進める。さらに、フィリピンにおけるイスラーム神秘主義思想の受容に関する基礎的研究を開始し、研究会等で中間報告を行う。これに加え、本研究、および、科研17K03144(2019年度終了)、NIHUイスラーム地域研究(2015年度終了)の成果にもとづき、かつて南部フィリピンと密接な交流があったスラウェシのイスラーム書の目録を作成し、上智大学イスラーム研究所ワーキング・ペーパーとして刊行する。また、フィリピンを含むその他の地域で収集した東南アジアのイスラーム書約500点の英文目録(補遺)の編集作業を開始し、年度内に草稿を作成する。これは校閲、序論執筆を経て2023年度に刊行予定である。
さらに2022年度後半にフィリピンでの現地調査を実施し(川島、菅原、久志本)、現地研究者との意見交換、現地のイスラーム学校や個人所蔵のイスラーム書の閲覧・調査、関係者への聞き取り調査、資料収集を行う予定である。ただし、現地での新型コロナ感染状況によってはさらに延期する可能性もある。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染蔓延が続き渡航制限が課されているため、当該年度に予定していたフィリピンでの現地調査を次年度に延期した。これに伴い、本年度の外国旅費全額を次年度に繰り越して使用することにした。また、東京で対面により実施予定であった研究打ち合わせ、勉強会をオンラインで実施したため、国内研究旅費全額を次年度に繰り越して使用することにした。

備考

学会報告以外に、本研究で得られた成果の一部を以下の講義を通じて発信し、社会に還元した。
菅原由美「イスラームとインドネシア」国際交流基金日本語パートナーズ派遣事業派遣前研修講義、2021年。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [学会発表] 死と終末の語りによる社会道徳の啓蒙:米国統治期ミンダナオの『来世の物語』にみる民謡歌手の意図2021

    • 著者名/発表者名
      川島緑
    • 学会等名
      東南アジア学会第103回研究大会 パネル「東南アジアのイスラーム書にみる「天国と地獄」: 死生観および社会道徳観への影響」(代表:菅原由美)
  • [学会発表] Circulation of Malay Manuscripts and Their Contribution to Religious Literature in Mindanao2021

    • 著者名/発表者名
      Kawashima Midori
    • 学会等名
      Malay Manuscript Lecture Series, International Institute of Islamic Thought and Civilization of the International Islamic University of Malaysia (Online)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ジャワとスマトラにおける『歴史』2021

    • 著者名/発表者名
      菅原由美
    • 学会等名
      科研「ペルシア歴史物語の生成、伝播、受容に関する学際的研究」(代表:近藤信彰)研究会
  • [学会発表] 19 世紀ジャワにおける地獄物語の変容: 『髑髏物語』と『天国と地獄に関する詳細な知らせ』の比較から2021

    • 著者名/発表者名
      菅原由美
    • 学会等名
      東南アジア学会第103回研究大会 パネル「東南アジアのイスラーム書にみる「天国と地獄」: 死生観および社会道徳観への影響」(代表:菅原由美)
  • [学会発表] Babad Tanah Jawiにおける聖者2021

    • 著者名/発表者名
      菅原由美
    • 学会等名
      東京外国語大学AA研共同利用・共同研究課題「ジャワ語及び東南アジア諸語テキストにみる宗教変容―イスラーム化過程における国家の戦略と役割」(代表菅原由美) 2021年度第3回研究会
  • [学会発表] 思想と戦略にみるムスリム・コネクティビティ:インドネシアにおける慣習法とイスラーム法2021

    • 著者名/発表者名
      菅原由美
    • 学会等名
      科研「イスラーム信頼学」(代表:黒木英充)ワークショップ「思想と戦略にみるムスリム・コネクティビティ:ミャンマーとインドネシアの事例から」
  • [学会発表] 東南アジア・イスラーム史研究手法:史料と方法論2021

    • 著者名/発表者名
      菅原由美
    • 学会等名
      2021年度東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所中東☆イスラーム教育セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] マレー語キターブにおける終末と来世:人々は何に関心を寄せてきたのか2021

    • 著者名/発表者名
      久志本裕子
    • 学会等名
      東南アジア学会第103回研究大会 パネル「東南アジアのイスラーム書にみる「天国と地獄」: 死生観および社会道徳観への影響」(代表:菅原由美)
  • [学会発表] ヒカヤット・メロン・マハワンサにおける改宗の物語:特徴とその社会的背景2021

    • 著者名/発表者名
      久志本裕子
    • 学会等名
      東京外国語大学AA研共同利用・共同研究課題「ジャワ語及び東南アジア諸語テキストにみる宗教変容―イスラーム化過程における国家の戦略と役割」(代表:菅原由美)
  • [図書] Kitabs and Islamic Learning in an Iranun Community in Sabah, Malaysia: Continuity and Change2022

    • 著者名/発表者名
      Kawashima Midori and Kushimoto Hiroko
    • 総ページ数
      92
    • 出版者
      Institute of Asian, African, and Middle Eastern Studies, Sophia University
  • [図書] Comparative Study of Southeast Asian Kitabs (7): Islamic Books and Learning in Thailand2022

    • 著者名/発表者名
      Kawashima Midori, Oman Fathurahman, Kobayashi Masashi, Nishi Naomi, Ervan Nurtawab, Ogawa Hisashi
    • 総ページ数
      80
    • 出版者
      Center for Islamic Studies, Sophia University
    • ISBN
      978-4-909070-27-2

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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