研究課題/領域番号 |
20K01011
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
中町 信孝 甲南大学, 文学部, 教授 (70465384)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 写本校訂 / アラビア語年代記 / ウラマー / デジタル校訂 |
研究実績の概要 |
研究活動のさまざまな面で、コロナ禍の影響を受けた一年であった。 校訂作業に関しては、オンラインでの読書会を研究協力者とともに14回開催した。これにより、年代記のおよそ2年分に相当する記述の校訂を進めることができた。ただし、対面での大規模なワークショップを開催して校訂原稿の校正を行う予定であったが、残念ながら実現できなかった。かわりに、リエージュ大学のフレデリック・ボダン教授に依頼し、校訂手法に関する講演会をオンラインで開催し、日本の研究者との間での情報交換の場を持つことができた。 ウラマー研究については、パネル参加を予定していたキプロスでのマムルーク学会は延期となり(のちに中止が決定)、発表の機会を失った。また夏期のシカゴ大学における文献調査も、安全状況を鑑みて見送らざるを得なかった。 デジタル校訂については、XML作成用のソフトウェアを購入し、またデジタルヒューマニティーズに関するいくつかの講習を受けることもでき、作業を進める準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
校訂のための読書会は、オンラインで支障なく行えているものの、そうしてできる校訂テクストは再度多人数で読み合わせて校正を行う必要がある。そのための対面ワークショップが行えなかったために、デジタルテクストの作成などその後の作業が遅れている。また、海外渡航が一切行えなかったことも、文献収集と成果発表の両面において遅れを生じさせる大きな原因である。ただし、オンラインワークショップなどにより海外の研究者との交流のハードルが下がったことで、研究の遅れを別の方法で挽回することは可能であり、今後さまざまな形での情報交換を行うことを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ベルギーにおける在外研究の予定であったが、渡航不可能のため、神戸大学人文学研究科での国内研究に切り替えて、研究に専念することとなった。ヨーロッパ諸国での文献調査の予定も実現は難しいが、状況が改善され次第、ベルギーにおける在外研究、あるいはエジプトにおける文献収集に取り掛かりたい。 校訂作業については、日本にいる間は今まで通り無理なく行える見込みなので、継続して開催する。校訂原稿校正のためのワークショップの開催については、オンラインで行う可能性も検討する。こうして精度の高い校訂原稿作成を目指しつつ、デジタル化の作業も本格的に進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
キプロスでの学会参加が中止となり、それにともない英文校閲などの費用も使うことがなくなった。また文献調査のためのシカゴ渡航も中止した。以上により、旅費、謝金、その他の費目において大幅に残額が出ることとなった。 次年度使用額のうち、旅費については可能な限りその目的で使用したいが、コロナ感染状況に改善が見られなければ本年度も使用が難しいと予想される。そのため、機器や書籍などの物品の購入に充てるか、マイクロフィルム複写などの史料収集・整備、および、英文での成果発表のための英文校閲などに使用するつもりである。
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