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2023 年度 実施状況報告書

清代中期における銅銭の安定流通の崩壊過程―銭貴から銀貴への反転を読み解く―

研究課題

研究課題/領域番号 20K01016
研究機関筑波大学

研究代表者

上田 裕之  筑波大学, 人文社会系, 助教 (70581586)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード雲南銅 / 制銭 / 日本銅 / 四川銅 / 档案 / 清代貨幣史 / 中国貨幣史 / 政策史
研究実績の概要

本年度は、従来の清代貨幣史研究において十分に検討されていなかった日本銅および四川銅に関して研究成果が得られた。
まず、上田裕之「清代乾隆前半における日本銅の輸入と各省鋳銭」(『史学』92(4)、1-29頁、2024年)において、乾隆年間(1736~1795)の前半における日本銅の輸入および各省の制銭鋳造との関係が乾隆前半にどのように推移していたのかを検討した。そして、日本銅が乾隆20年代までは一部諸省の制銭鋳造の原料として大きな役割を果たしていたものの、乾隆20年代なかば以降に縮小し、そのために雲南省に対する需要が年間75万斤程度増加して、乾隆30年代の雲南銅急減にともなう混乱に拍車をかけたことを明らかにした。
次に、上田裕之「清代乾隆年間における四川銅」(『社会文化史学』68、43~60頁[横組]、2024年)において、乾隆年間における四川銅の生産および北京・一部諸省の制銭鋳造と市場への供給の推移を跡付けた。そして、四川銅が短期的ながらも清朝の銅調達および市場の銅流通において貨幣史上重要な時期に大きなプレゼンスを占めたこと、また、上記のような四川銅の量産は官の収買価格を従前の規定よりも高く設定するとともに生産量の37.75%の自由販売を認めるという四川省の積極的な措置によって引き出されたと考えられることを論じた。
これまで、清代貨幣史、とりわけ銅銭の比重が増した乾隆年間のそれは、専ら雲南銅に注目して議論がなされてきた。しかしながら、雲南銅がその生産コスト上昇のため雲南省の制銭鋳造(その差益が雲南銅の生産コスト上昇に対応するための財源とされた)によって消耗するなかで、日本銅や四川銅は決して看過し得ない意味をもったことが上記の研究によって明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、申請時点においては特に雲南銅を研究対象として挙げていたが、研究を進めるなかで日本銅と四川銅の重要性に気づき、その成果を2本の研究論文として発表することができた。その一方で雲南銅に関する研究も着実に進展し、その成果は上田裕之「清代乾隆中葉における雲南ベン銅の空間的再編」(『東洋史研究』83(1)、1~35頁、2024年)として刊行されることが既に決定している。

今後の研究の推進方策

引き続き『宮中档朱批奏摺財政類』『宮中档乾隆朝奏摺』を初めとする一次史料と『大清高宗純皇帝実録』『皇朝文献通考』『欽定大清会典事例』『欽定戸部鼓鋳則例』などの官撰書から関連する記載を徹底的に洗い出し、銅銭の安定流通が弛緩・瓦解していったプロセスの解明に取り組む。最終年度となる2024年度においては、私鋳銭の大量流通と銭価の暴落が問題化した乾隆末期の状況に特に注目したい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] 清代乾隆前半における日本銅の輸入と各省鋳銭2024

    • 著者名/発表者名
      上田裕之
    • 雑誌名

      史学

      巻: 92(4) ページ: 1-29

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 清代乾隆年間における四川銅2024

    • 著者名/発表者名
      上田裕之
    • 雑誌名

      社会文化史学

      巻: 68 ページ: 43-60

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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