• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

独立期のインドネシア華人社会史研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K01018
研究機関東京大学

研究代表者

津田 浩司  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60581022)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードインドネシア / 華僑・華人 / 社会史 / 『民報(Min Pao)』 / 『共栄報(Kung Yung Pao)』
研究実績の概要

2023年度は、『共栄報(Kung Yung Pao)』の後継紙『民報(Min Pao)』の完全データを入手することを課題として掲げていた。しかしながら、同紙をまとまった形で所蔵するインドネシア国立図書館の規定が大きく変わり、スキャン・サービスが廃止され閲覧のみとなったため、同計画は見直しを余儀なくされた。
2023年度の成果として、単著『日本軍政下ジャワの華僑社会―『共栄報』にみる統制と動員』(風響社、2023年2月刊)の研究内容を一層深化させるため、ブックトーク・イベントにて対談を行った。また、同書が第13回(2023年度)地域研究コンソーシアム賞研究作品賞を受賞したことを受け、同コンソーシアムの年次大会において受賞記念講演を行った。
同書が華人を取り巻くインドネシア現代史研究の新たな地平を切り拓いたものと高く評価されたことを受け、新たな知見を盛り込み大幅な加筆を行ったうえで、インドネシア語に翻訳する作業を進めた(年度内に全14章中11章まで翻訳終了)。2023年8月にはインドネシアの出版社と協議を行い、出版に向けての道筋をつけた。
前年度に開催された国際研究集会International Conference on Chinese Diaspora in Southeast Asia Studies(ICCDSAS2022)の選抜論集とりまとめに編者のひとりとして携わり、オンライン公開をした(うち、筆頭論文は津田による単著論文)。
その他、学会や研究プロジェクト、および本務先の国際交流部門のウェブサイト等に、オンラインの短文記事4点を執筆・公開した。また、日本軍政期から独立期にかけての要人に対するインタビュー記録(倉沢愛子慶応義塾大学名誉教授が実施)を修復・アーカイブ化するために、データのデジタル化(修復作業を含む)を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2023年度は、インドネシア国立図書館等での資料収集を中心に現地調査を行い、特に『共栄報(Kung Yung Pao)』の後継紙『民報(Min Pao)』の完全データの入手に注力することとを最大の課題として設定していた。しかしながら、『民報』をまとまった形で所蔵するインドネシア国立図書館の規定が、コロナ禍で渡航が叶わなかった間に大きく変わり、希少定期刊行物を同館にてスキャン/写真撮影してもらうサービスが廃止され、原則閲覧のみとなってしまった。これに伴い、『民報』の紙面分析を中心に日本占領末期から独立期にかけてのインドネシア華人を取り巻く言説空間と社会史を再構成するという当初の研究計画は、現地長期滞在なしには実行不可能となり、大幅に見直すことを余儀なくされた。
一昨年度来準備していた、林群賢(Liem Koen Hian, 1897~1952年)の1940年代前半の活動に焦点を当てた評伝原稿(論集1章分と補遺資料3点)は、前年度の初頭には完成し、編集責任者に提出した。この評伝では、オランダ時代末期からジャーナリストとして活躍し、インドネシア独立後は同国の華人ら(特にプラナカン華人)をインドネシア社会の中に積極的に位置づけようと腐心した重要人物として知られる林の、従来知られていなかった日本軍政期・独立期初期の活動に、『共栄報』ならびに『民報』を中心資料として光を当てたものである。ところが、共著者の原稿提出状況が思わしくなく、出版社側の都合もあって現時点では出版計画を仕切り直しているところである。
一方で2023年度には、前年度中に開催された東南アジア華人ディアスポラに関する国際研究集会の選抜論集を編集しオンライン上で公開したほか、前年度に刊行した単著の反響が大きかったことを受け講演やオンライン対談などを行うなど、複数の成果が得られた。

今後の研究の推進方策

本プロジェクトは2023年度が最終年度の予定であったが、コロナ禍で実質3年にわたってインドネシアへの渡航が不可能となった。その間に、インドネシア国立図書館の規定が変わり、プロジェクトを遂行するうえで核となる新聞資料『民報』のデータを入手することが困難となった。これを受けて(コロナ禍の研究中断期間も踏まえて)プロジェクト期間を1年間延長するとともに、日本軍政期と独立期の人的・組織的な連続性・断絶性の解明に向け、多角的な史資料の発掘・分析に注力することとする。
2024年度(最終年度)は、本プロジェクトの成果物でもある単著『日本軍政下ジャワの華僑社会』の加筆とインドネシア語訳を早急に終え、インドネシアでの出版に向け準備を進める。加筆に当たっては、入手済みの新たなデータ(写真等を含む)を可能な限り盛り込む。
2024年11月にマラナタ・キリスト教大学(バンドゥン、インドネシア共和国)で開催予定の世界海外華人研究学会(ISSCO)の地域会議(Regional Conference)に参加し、成果報告を行う。
部分的に入手済の『民報』のデータに基づき、引き続き分析を継続するとともに、ウェブ上に(研究者限定で利用可能なように)公開することを検討する。

次年度使用額が生じた理由

本プロジェクト初年の2020年以来、コロナ禍の影響でおおよそ3年にわたりインドネシアへの渡航が叶わず、データ入手が大幅に遅れた。
『共栄報』の後継紙『民報』をまとまった形で所蔵するインドネシア国立図書館の規定が大きく変わり、希少定期刊行物をスキャンないし写真撮影するサービスが廃止され、原則閲覧のみとなってしまった。これに伴い、『民報』の紙面分析を中心に日本占領末期から独立期にかけてのインドネシア華人を取り巻く言説空間と社会史を再構成するという当初の研究計画は、現地長期滞在なしには実行不可能となり、大幅に見直すことを余儀なくされた。
一昨年度来準備していた、林群賢(Liem Koen Hian, 1897~1952年)の1940年代前半の活動に焦点を当てた評伝原稿(論集1章分と補遺資料3点)はすでに脱稿しているが、共著者の原稿提出状況が思わしくなく、出版社側の都合もあり、現時点では出版計画を仕切り直している。
上記の一連の事態を受け、研究計画に大きな変更が生じたため、45万円ほどの次年度使用額が発生した。この次年度使用額については、2024年11月にバンドゥンで開催予定の国際学会に参加するための旅費として執行する計画である。

備考

Proceeding International Conference on Chinese Diaspora in Southeast Asia Studies
2022年11月にマラナタ・キリスト教大学主催のもとオンラインで開催された、東南アジアにおける華人ディアスポラに関する国際研究集会(ICCDSAS2022)の成果論文選集。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Universitas Kristen Maranatha(インドネシア)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      Universitas Kristen Maranatha
  • [雑誌論文] インドネシアの華人コミュニティへと飛び込んで。一人ひとりに向き合い描く民族誌2024

    • 著者名/発表者名
      津田浩司
    • 雑誌名

      東京大学大学院総合文化研究科・教養学部グローバリゼーションオフィス「私を変えたあの時、あの場所」

      巻: - ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 調査レポート「ジャワ北海岸の洪水と歴史をめぐる雑感」2024

    • 著者名/発表者名
      津田浩司
    • 雑誌名

      海域アジア・オセアニア研究プロジェクト(MAPS)東洋大学拠点ウェブサイト

      巻: - ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Finding the “Missing Link”: Organization Process of Batavia’s Chinese Community under the Japanese Military Rule2023

    • 著者名/発表者名
      TSUDA Koji
    • 雑誌名

      Proceeding: International Conference on Chinese Diaspora in Southeast Asia Studies

      巻: - ページ: 5-15

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 日本軍政下ジャワの華僑の歴史経験に、新聞資料を通じて迫る2023

    • 著者名/発表者名
      津田浩司
    • 雑誌名

      日本華僑華人学会ウェブサイト「研究の現場」

      巻: - ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 調査レポート「マカッサルの中元普渡節行事観察記―龍顕宮仙媽廟」2023

    • 著者名/発表者名
      津田浩司
    • 雑誌名

      海域アジア・オセアニア研究プロジェクト(MAPS)東洋大学拠点ウェブサイト

      巻: - ページ: -

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 第13回地域研究コンソーシアム賞研究作品賞受賞記念講演『日本軍政下ジャワの華僑社会―『共栄報』にみる統制と動員』(風響社、2023年)2023

    • 著者名/発表者名
      津田浩司
    • 学会等名
      地域研究コンソーシアム2023年度年次集会
    • 招待講演
  • [学会発表] ブックトーク・オン・アジア No.62: 津田浩司『日本軍政下ジャワの華僑社会―『共栄報』にみる統制と動員』(風響社、2023年)2023

    • 著者名/発表者名
      津田浩司・中西嘉宏
    • 学会等名
      ブックトーク・オン・アジア
    • 招待講演
  • [図書] Proceeding: International Conference on Chinese Diaspora in Southeast Asia Studies (Socio Cultural Research of the Chinese Diaspora in Southeast Asia)2023

    • 著者名/発表者名
      Sugiri Kustedja (proceeding editor), Tsuda Koji et. al (editors)
    • 総ページ数
      178
    • 出版者
      MCU Press
    • ISBN
      9786027212794
  • [備考] Proceeding ICCDSAS2022

    • URL

      https://repository.maranatha.edu/32081/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi