本研究で提示し得た清代後半の盛京における文人科挙官僚家族の社会的戦略やその特徴からは、清代マンチュリアという移民社会のなかの「移動」現象のみならず、その地域への「定着」という過程の一端を垣間見ることもでき、その長期的歴史変動過程を理解するための新たな観点・論点を提示できたこと、また、これによって清代中国における移民社会の歴史研究などにも新たな提起をなし得ることなどが、本研究の学術的意義として挙げられる。 また、本研究で試みた歴史の捉え方は、大きなうねり・変化・流動性のなかで日常的にそれへの対応を迫られている現代の個人や家族の選択・判断に対しても、小さいながらその参照事例・提言として提示し得る。
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