| 研究課題/領域番号 |
20K01022
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| 研究機関 | 神戸大学 |
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研究代表者 |
中村 覚 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (60359867)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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| キーワード | サウディアラビア / ワッハーブ主義 / ジハード / 全方位均衡 |
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| 研究実績の概要 |
3年目となる令和４年度には、ムハンマド・ビン・アブドゥルワッハーブのタクフィール観とジハード観に関して、彼が著した書簡や小論などの原典を解読し、検討して、査読付論文を発表することができた。本研究の一年目に論じたように、現代サウデウィアラビアの中道的イスラーム論では、戦いのジハードは、異教徒に対する戦闘を指すのであり、ムスリム同士の紛争や内戦を指す概念ではない。そこで、ワッハーブ主義の始祖であるムハンマド・ビン・アブドゥルワッハーブの第一次サウード朝がムスリムと戦った歴史をどう自己認識していたのか、という問題は、サウディアラビア史とイスラーム学上の重要課題である。この問いを検討するために、ワッハーブ主義に関する主要な先行研究である、A.Al-Yassini、C.Helms 、H.Laoustの研究を見直すことができた。また、信仰者としてのムスリムの観点に立ちながら、ワッハーブ主義のイスラーム学上の正当性を問う視点に立つアリー・タンターウィー師の研究（al-Tantawi 1961）を検討することができた。本研究の進捗との関連では、ムハンマド・ビン・アブドゥルワッハーブのイスラーム解釈は、中道的イスラームの解釈の範囲にあったと評価できると同時に、ジハードを正当化する複雑な構成であったことから、サウディアラビア王国の正当性の源泉であると理解できる。また、彼のジハード論は、防衛という現代的な用語は用いていなかったと判明したが、彼のジハード観を裏付けるクルアーンの章句や同時代史の解釈を明らかにすることが出来た。
また、小職が監修する「中東研究の最前線」シリーズの第四巻『エジプト』の作成過程で全方位均衡論を適用する章に助言したり、同シリーズ第五巻『君主制国家』（出版見込み2023年5月）での序章や終章等を執筆担当した際に、全方位均衡論について研究を深めることが出来た。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定表通りに機械的に作業が進むわけではないが、概ね、順調に進展している。五年目に予定していた国外での研究発表は、四年目に実施できる予定である。サウディアラビア国家形成史を枠付ける全方位均衡論とジハード論に関して、順調に解明が進んでいる。サウディアラビア史の情報量は膨大であるが、本年度に資料の精査を進めると共に、議論を総合して完成させるための作業の段階に進む。
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| 今後の研究の推進方策 |
今年度は、日本中東学会とMiddle East Association of North Americaにて、昨年度に明らかに出来た成果、ムハンマド・ビン・アブドゥルワッハーブのタクフィール観とジハード観に関して学会発表する。また、ワッハーブ主義やサウディアラビア王国の国家形成史の全容を出版するための総合的な準備にとりかかる。「ワッハーブ主義」に関連するイスラーム学者の中で、ムハンマド・ビン・アブドゥルワッハーブなど、鍵となる者を選んでイスラーム学の著作を検討する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大のために、三年度にわたり、国外での資料調査や研究発表を控えなくてはならなかったため、資料の購入も滞りがちとなり、予算の消化が進まなかった。今年度は、国内外での研究発表を既に予定している。国外での資料調査や専門家との意見交換の予定も立案してみたい。
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