植民地の映画人たちは帝国日本の忠実な臣民(真の映画人)として認められるため、いかなる欲望を抱き、その欲望を構築する内的論理をいかに形成していったか。 本研究は植民地朝鮮の映画たちが行った日本と朝鮮を跨る映画活動を軸に、こうした問に答えていくものである。2021年度も2020年度と同様、海外調査を通して資料を収集することはかなわなかったが、様々な国内外のデータベースを活用しながら、とりわけ韓国側の近年の研究成果を分析し、日本での研究との接点を探った。 その結果、映画監督であり、映画評論家としても活躍した徐光濟(ソグァンジェ)に関する多くの資料を入手し、分析することができた。徐光濟(ソグァンジェ)が日本内地への映画留学を終え、その留学経験について語った資料などから帝国映画と帝国映画人たちに対して彼が抱いた一見矛盾する、二重的な感情が読み取れる。なお、徐光濟(ソグァンジェ)本人が述べた日本内地映画留学の経験談とそこから派生した朝鮮映画界への提言、さらにはその提言に対する朝鮮映画人達の反応と感情が垣間見える資料なども入手できた。それらを交差させながら植民地朝鮮映画人達の「ビカミングジャパニーズ」の内的論理とそこに潜んでいる歪んだ欲望と挫折を考察することが可能となった。 今後これらの点について他の朝鮮映画人たちの日本経験との比較などの視点を用いながら掘り下げ、研究成果のアウトプット化を図っていく予定である。
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