研究課題/領域番号 |
20K01027
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
私市 正年 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (80177807)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | スーフィー教団 / ザーウィヤ / ナショナリズム / コーラン学校 / カビリー |
研究実績の概要 |
研究計画に沿って以下の研究を行った。 (1)スーフィー教団発行の新聞の内、Lisan al-Din, al-Balagh al-Jaza'iri, al-Rashadの3紙の記事の中から 反植民地的な倫理道徳記事と政治的記事を抜き出し、その内容を分析した。分析した記事とその内容は、表にしてデータ入力を行った。また新聞に登場する地名や人名や団体名などについては、現地調査ができなかったため、Foued al-Qasimi氏とメール上で連絡をとり、確認作業を行ったが、それは一部に留まった。(2)スーフィー教団の地域社会との関りでは、Zawiyaやコーラン学校での教育が重要であるので、オーレス地方出身者たちの独立戦争における戦死者人名辞典(Shuhada mintaqa al-Awras, vols.1-2)を分析し、彼らのZawiyaやコーラン学校での教育がジハード意識の形成にいかなる影響を与えたか、を分析した。(3)スーフィー教団の新聞のナショナリズム運動への影響については、日本中東学会年報に”Anticolonialisme et tendance politique des tariqas soufies et des zawiyas en Algerie”を執筆・投稿し、採択が決定した。 (4)カビリー地域はスーフィー教団の活動が活発であったと同時に、フランスが植民地支配の拠点としてフランス語化政策とキリスト教布教政策を積極的にすすめた地域である。そのカビリー地域の歴史・文化的背景を調べるために、J. Servier著"Les Berberes"(クセジュ)の読解作業を開始した。ベルベル語やベルベルの慣習については、Chachoua教授(フランス・CNRS)より必要に応じて助言を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)本研究で必要なスーフィー教団発行の新聞資料のうち、Lisan al-Din, al-Balagh al-Jaza'iri, al-Rashad, al-Murshid紙は入手しており、必要な作業を支障なく進められる状況にある。(2)Zawiya al-Hamilの青年たちが発行していた地下新聞al-Ruhの分析はすんでおり、それと公認新聞との比較は比較的容易に行われると思われる。(3)スーフィー教団の新聞の読者が誰であったかを特定することは難しいが、オーレス地方出身者たちの独立戦争における戦死者人名辞典(Shuhada mintaqa al-Awras, vols.1-2)を読む限り、彼らがZawiyaやコーラン学校での教育から大きな影響を受けていたことが確認された。これはスーフィー教団の新聞の読者がどのような人たちであったかを推測するための大きな手がかりとなろう。(4)スーフィー教団の新聞のナショナリズム運動への影響については、日本中東学会年報に”Anticolonialisme et tendance politique des tariqas soufies et des zawiyas en Algerie”を投稿し、採択されたことは、次のステップにすすむことを容易にした。以上から本研究がおおむね順調に進展していると判断をした。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)研究計画に沿って、既に入手したスーフィー教団発行の新聞を、倫理道徳的な記事と政治的な記事の二つの側面について今年度も分析を続ける。未入手の新聞Dhikrについては、海外調査ができる状態になった時点でアルジェリアの国立図書館、およびMostaganemの文書館とフランスのAixの海外史料文書館、パリの国立図書館等で資料調査を行う。(2)新聞記事に出てくる人名や団体名、地名などについては、現地調査をし、Foued al-Qasimi氏の協力を得て調査と確認作業を行う。(3)スーフィー教団の新聞の読者が誰であるか、については、Zawiyaやコーラン学校の生徒たちではなかったのか、という仮定のもとに、Shuhada mintaqa al-Awrasの人名辞典の分析を続ける。あわせて現在、活動中のzawiyaを訪れ、名簿の調査や聞き取り調査を行う。(4)フランスのIREMAMの研究者Kamel Chachoua 氏を訪れ、植民地期のカビリーのzawiyaについて意見交換を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、予定していた海外調査(アルジェリアを予定)がコロナ感染のためできず、調査費用が残り、それを次年度にまわしたため。および、海外調査で入手予定であったスーフィー教団関連資料の費用と、現地にて資料講読のための謝金の支出が不要となったため、これも次年度にまわすこととした。次年度にまわした予算は、海外出張が可能となり次第、調査旅費と現地での資料購入費と資料講読謝金として使用する予定である。
|