研究課題/領域番号 |
20K01032
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 豊志 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10243619)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポピュリズム / 人民主権論 / アメリカ民主主義 |
研究実績の概要 |
本研究はアメリカ民主政が発展・確立する18世紀末から19世紀前半期に頻発した「反乱」を、民衆が独自に構築した人民主権論にもとづくポピュリズム運動ととらえ、その論理と運動の全体像を描き出すことにより、ポピュリズムが合衆国政治文化の基盤形成期において果たした役割を明らかにする。本研究では、民衆独自の人民主権論およびその発現としてのポピュリズム運動(「反乱」)を「異端のデモクラシー」と名付け、そこに内在する革新性と反動性の関連を明らかにすることにより、初期のポピュリズムがアメリカ民主政の展開に与えた影響を解明することが本研究の最終目標である。 以上の構想のもと、2020年度は初期アメリカ型人民主権論の特質を把握するために、ピューリタン革命に起源を有するイギリス型人民主権論が反英闘争を経るなかで独立宣言型の人民主権論に劇的に転換し、植民地人の「臣民」意識が「人民」意識に転化した過程、および独立後各地で発生した人民主権の解釈論争を分析した。 以上の作業により、独立期から建国期にかけての人民主権論については、これまでその穏健化が強調されてきたが、実際には人民の革命権を認める独立宣言型の急進的人民主権論も生き残り続けていたこと、そしてその背景にあったのは民衆の反知性主義であったことが明らかになった。すなわち、キリスト教福音主義に裏付けられたこの反エリート主義的心性は、独立期には万民の自由・平等を旨とするアメリカ型人民主権論構築の原動力となっただけではなく、建国期には主権者としての人民は憲法制定権の自由な行使をつうじて無条件に政府を改廃しうるとする民衆独自の人民主権論を生み出す触媒にもなったのである。 以上から、アメリカ型人民主権論には人民の権能を広く認める「もうひとつの人民主権論」が存在していたことが明らかになり、これが建国期以降に頻発した「反乱」の理論的支柱となったという見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年春に発生したコロナ禍の影響により、当初予定していた国内外の資料調査が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も国内外の資料調査には大きな制約が課せられると予想されるため、研究の基礎資料に関しては既に収集した資料に加え、オンライン上の電子化された資料に依拠して進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために予定していた国内外の資料調査が実施できなかったこと。とりわけ、海外における資料調査については今後も制約が課されると予想されるため、状況を慎重に見極めつつ、本使用額については国内で購入できる資料購入費等に充当する予定である。
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