研究課題/領域番号 |
20K01038
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
皆川 卓 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90456492)
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研究分担者 |
石黒 盛久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50311030)
甚野 尚志 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90162825)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アリストテレス / スコラ学 / サヴォナローラ / エラスムス / ボッテーロ / イエズス会報告書 / パブリシティの多様化 / 道徳神学 |
研究実績の概要 |
2023年9月に科研費(B)「包括する暴力」(代表:甚野尚志)との共催で、ベルガモ大学のマルコ・ペッレグリーニ教授を代表者所属機関の山梨大学に招き、「サヴォナローラ: 預言・改革そして専制への抵抗」と題する報告を依頼した。この報告とそれを受けた議論の結果、世界史的に著名である当該神学者が一般に評価されている如き神権政治主義者ではなく、当時の文脈に即してアリストテレス主義的な君主・国家観を有していた事実が判明した。さらに2023年11月には研究代表者の皆川が、武蔵大学の踊共二氏の主宰する「東西融合史研究会」において、フランク時代のサン・ミヒエルのスマラグドゥス、13世紀のエギディウス・ロマヌス、16世紀のエラスムスの君主鑑の三点観測から、主要報告である中国唐代の君主指南書『群書治要』との比較を行い、これまでの本科研費研究で検討した諸事実から、カトリック君主鑑は、思想的・政治的環境のみならず、そのパブリシティの拡大に応じて、内容を聖書実証主義的な統治術指南から「自然」による神意の間接化を経て国制論・政治哲学へと変容することを明らかにした。さらに2024年3月には甚野と皆川も出席した「フィレンツェ国際研究所」の主宰学会で研究協力者の石黒盛久が報告し、ボッテーロの君主鑑がマテオ・リッチらのイエズス会宣教師の報告書を通じて同時代の明帝国の統治制度を詳細に把握し、合理的統治の存在を立証しようと試みたことを論証した。以上を含む4年間の研究活動により、16~17世紀に表出したカトリック君主鑑の一種の「脱神学化」は、本研究の作業仮説として設定した筆者の人的ネットワークの短期的構造変化ではなく、むしろキリスト教徒の活動の地域的拡大および君主鑑の受け手である読者層の広がりに対応する形でその内容を「脱神学化」していく長期的変容の蓄積の最終局面と見なせることが判明した。
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