研究課題/領域番号 |
20K01046
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
轟木 敦子 (中村敦子) 愛知学院大学, 文学部, 教授 (00413782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アングロ・ノルマン / 貴族 / 中世イングランド / 中世ウェールズ / 中世ノルマンディ |
研究実績の概要 |
今年度は長期的課題である中世盛期アングロ・ノルマン世界の貴族間ネットワークの研究を継続しつつ、とくに昨年度の研究において注目したアングロ・ノルマン期有力貴族のチェスター伯ヒュー1世とその家臣ロバート・オヴ・リズラン、そして2世紀半ばのチェスター伯レナルフ2世のネットワークに関する研究を発展させた。 ロバート・オヴ・リズランに関しては、サンテヴルール修道院のオルデリク・ヴィタリスが書いた『教会史』を中心にロバートとウェールズ境界領域、イングランド、そしてノルマンディのそれぞれにおける彼の拠点と活動の特徴をたどり、現在学術雑誌に投稿中である。 レナルフ2世に関しては、彼が建立したウェールズ辺境地域の修道院であるベイジングワーク修道院、チェスター伯ヒューが建立したチェスターのセントワーバラ修道院、そしてチェスター伯家が寄進したノルマンディのサンテヴルール修道院という、チェスター伯家とそれぞれ関わりを持ちつつも離れた地域にある修道院同士の、寄進された権益をめぐる長期にわたる交渉をたどる研究を2021年度から継続して進めている。その成果は2023年度に公表の予定である。 また、ウィリアム征服王の晩年に発給されたある証書にロバート・オヴ・リズランが証人として登場しているが、その証書はノルマンディのフェカン修道院のイングランド所領に関するものである。この所領をめぐるやりとりに関する複数の証書が残っており、それらからノルマン征服前からのフェカン修道院とイングランドとの関わりがわかる。これに関しては、愛知学院大学文学部人間文化研究所所報48号に「フェカン修道院とスタニング- ウィリアム征服王証書から」として公表し、さらに展開させて別稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画よりもやや遅れている理由として、まず、2022年度も継続して予定していた渡欧調査ができなかった点がある。調査場所となる海外の研究機関等はすでに通常の業務を再開しだしていたが、渡欧できても帰国の前後の準備の負担が大きく、限定された期間での渡欧は困難と判断したためである。 また、研究計画に関わる状況としては、自分の能力不足ゆえに期待したほど史料の解読が進んでいないことがまずあげられ、とくにノルマンディ側、ウェールズ側の資料の収集と解読が遅れている。また、ヘンリ2世の証書集が昨年ついに刊行されたがまだ全巻そろっておらず、索引巻が未刊であり、全体的な利用がまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究はなかなか進まないが、計画自体は大きく変更する必要を感じていない。テーマに関しても、方向性と重要性は変わることなく、可能性のあるテーマだと感じている。したがって、研究計画の進度に関する変更や内容に関して微細な修正で対応可能と考えている。また、本研究課題の内容に関わる研究を進めながらも、途中段階のまま完成せず成果としてまとめられていない内容が複数あるので、整理したうえで、順次しっかり公表していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
残念ながら今年度も渡欧しての調査を予定しており、その分を計上し研究計画を立てていたが、今年度も渡欧調査を実施することができなかったため、その分が次年度に繰越され、未使用額が生じた。また、英文校閲費も予定していた分について、原稿が間に合わずに未使用となった。 今年度は夏と春に現地調査を予定している。また、モバイル・パソコンの更新、英文校閲費の使用を予定している。
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備考 |
人間文化研究所所報第48号 「フェカン修道院とスタニング- ウィリアム征服王証書から」
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