研究課題/領域番号 |
20K01046
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
轟木 敦子 (中村敦子) 愛知学院大学, 文学部, 教授 (00413782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 西洋中世史 / 貴族 / イングランド / ノルマンディ / ウェールズ / 証書史料 |
研究実績の概要 |
本研究課題「11・12世紀アングロ・ノルマン王国における境界地域の貴族間ネットワーク」において2023年度は関連する重要研究書についての書評論文1本と、研究の統括として学会発表1本を公表し、それをもとに投稿論文1本を準備中という状況である。書評はウィリアム征服王の時代について、入門書の形をとりつつ最新の研究動向を示す書籍を評したものである。学会発表では、チェスター伯レナルフ2世の宮廷に集う人々をチェスター伯家の証書集をもとに網羅的に洗い出し、彼らとチェスター伯との関係を探った。チェスター伯家とノルマン征服以前のノルマンディ時代からの関係を継続していた家系がいまだみられるだけでなく、ノルマン征服後、そしてレナルフ2世の時代に入ってから新たに関係が構築されたであろう人々の存在など、新たな特徴を浮かび上がらせることができた。また、証書への登場がレナルフ2世との関係だけでなく、当時の政治状況を示すこともわかった。たとえば、William fitz Alanは証書自体の登場回数は少ないものの、スティーヴン王の内乱期とされる混乱期において、レナルフ2世と興味深い関係を示す。すなわち、ウェールズ境界地域における有力貴族であるWilliam fitz Alanは早い段階からスティーヴン王に対抗するマティルダ側の中心人物であったが、ある段階からレナルフの宮廷の重要な集会に現れていることから、スティーヴン側にいたレナルフ2世がマティルダ側へと転換するのに伴い、William fitz Alanとの関係も再構築されたことが明らかとなった。この関係を中心に、レナルフ2世とウェールズ境界地域の勢力ネットワークの実態を探った論文を近日中に完成させる予定である。
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備考 |
書評「「ウィリアム征服王の時代」を考える-Benjamin Pohl ed., A Cambridge Companion to The Age of William the Conqueror (Cambridge, 2022)」人間文化研究所紀要『人間文化』第38号、50(129)-40(139)頁。
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