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2021 年度 実施状況報告書

貨幣から見る東地中海世界におけるローカルアイデンティティの変容

研究課題

研究課題/領域番号 20K01047
研究機関関西大学

研究代表者

比佐 篤  関西大学, 研究推進部, 非常勤研究員 (50770492)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード古代ローマ史 / ローマの貨幣 / ヘレニズム世界の貨幣
研究実績の概要

今年度は、東地中海の諸都市における貨幣が、都市ごとの歴史的状況とどのように関わるのかについて調べた。
東地中海ではもともと各都市にゆかりのある神々や事物が貨幣に描かれており、都市ごとに大きく図像は異なっていた。ただし、選択される図像は年を経るごとに絞られていく傾向にあった。こうした状況は、諸王国の勢力がそれまで以上に強くなるヘレニズム時代になると変化し、ヘレニズム諸王家を顕彰する貨幣が増えてくる。そうした図像の変化は、都市の置かれた歴史的状況によって異なる。その際に、地理的な要因よりも関係性こそが、図像の選択にとって意味がある。諸王家から遠い場所にあろうとも、諸王家との関係を深めようとする意図があった都市ほど、諸王家に関わりのある図像を選ぶ傾向にある。
こうした傾向は、ヘレニズム諸王国を滅ぼしたローマの支配期に入ると少し異なっていったものの、元首政期に入ると類似した性質が現れてくる。ローマがヘレニズム諸王国と戦い始めた前2世紀は、ローマは共和政であった。その頃から共和政末期の東地中海の諸都市の貨幣を見ても、ローマに関わりのある図像が描かれた貨幣はほとんど見られない。ところが、これが元首政期に入るとローマとの関わりのある図像が一気に増える。そうした図像の多くは、ローマという国家に関わるものよりは、皇帝個人に関わるものが大部分を占める。これは、ローマが共和政から元首政へ変化することで、ヘレニズム王国との類似性が強まった結果であると考えられる。
となると、ヘレニズム諸王国の顕彰を通じた都市内部の変質は、ローマ元首政への移行においても東地中海にて大きな混乱がなかった理由の1つになったと言える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ローマによる統治の浸透と各都市の貨幣の状況の変化の様相が、思っていたよりも都市ごとにかなり異なっていたため、都市ごとの状況を調べる手間がかかってしまい、予測していたよりも検証が進まなかった。

今後の研究の推進方策

初代皇帝トゥスアウグストゥス以後の、東居地中海の諸都市の貨幣の図像の変遷を探ることで、東地中海の短期的な変化と長期的な変動を共にさらに検討していく。

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究はすでに手元にある文献を用いた調査に集中していたため、経費の利用が特に必要なかった。さらに、コロナの影響で旅費の使用が滞ったが、その分をさらに研究を進めるための文献の購入に充てる予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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