研究課題/領域番号 |
20K01057
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
生田 美智子 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 名誉教授 (40304068)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シベリア抑留 / 女性部隊 / 女性の戦争動員 / 日ソ戦争 / 東西冷戦 / 分散移動 / 特別病院 / 引き揚げ |
研究実績の概要 |
『女たちの満洲』(大阪大学出版会、2015年)を執筆する過程で佳木斯第一陸軍病院の看護婦でシベリアに抑留された井上ともゑさんの知己をえて、その縁で同じ部隊にいた女性抑留者の多くを紹介していただき、約40人に取材することができた。 ロシアに出張し、自動車と道先案内人を雇い、ハバロフスク地方を約2週間にわたり現地調査を行い、女性抑留者を目撃した人や地方の古老の話を聞いた。さらに、ロシアの文書館の元職員で郷土史家のラヴレンツォフ氏の案内で、収容所跡を調査した。ほとんどの収容所跡は現在では何も残っていないが、女性が入ソ直後しばらく待機させられていた将校収容所は満洲皇帝溥儀が収容されていたことから観光地として整備されていたので、調査することができた。また、東京にある日本赤十字情報プラザで日本赤十字の看護婦長の赤十字あて報告書を閲覧し、抑留された日赤看護婦の母体である広島・岡山の赤十字社では彼女たちにあてた赤紙や看護手帳、シベリア体験記を閲覧・複写した。 さらに、モスクワの軍事公文書館でシベリア抑留者の移動リスト、すなわちハバロフスク地方の収容所からの移動リストの中に女性の名前が多数混在しているのを発見し、そのほとんどが井上ともゑさんが所属していた佳木斯第一陸軍病院の看護婦であった。 こうして、従来は個別の移動しか知られていなかったのが、集団としての女性抑留者の動きを確認することができた。その成果を雑誌『セーヴェル』に「終わらない戦争ー女たちのシベリア抑留シリーズとして、36号、37号、38号に公刊した。 日ソ戦争史研究会でも口頭報告し、同研究会が出版した『日ソ戦争史の研究』第3部第3章に「女たちのシベリア抑留」と題して公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響とロシアとの関係悪化により、ロシアの公文書館や現地調査に行くことができなかった。しかし、電話やメールでの取材と過去に収集した資料を用い、論文を発表し、雑誌『セーヴェル』ハルビン・ウラジオストクを語る会、36号に「終わらない戦争ー女たちの分散移動」、2021年37号に「女たちの戦後」、38号、2022年に「自著を語る『満洲からシベリア抑留へー女たちの日ソ戦争』とし 題して公刊した。 『満洲からシベリア抑留へ:女性たちの日ソ、戦争』と題して、単行本をを2022年4月に人文書院から公刊することができた。 『日ソ戦争史の研究』(日ソ戦争史研究会、2023年)の題3部第3章に「女性たちのシベリア抑留」と題して出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
樺太に抑留されていた女性を探しだし、取材する。樺太にいた女性は他の抑留地にいた女性よりも日本に引き揚げてくるのが遅かった。その間の事情を長老を探しだして聞き出す。また、樺太の公文書館でその間の事情を書いた文書を探し出して閲覧する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍とロシアとの関係悪化のため、ロシアに調査旅行に出かけることができなかった。今年はサハリンに渡航が可能なので、調査旅行をする計画をたてている。
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