研究課題/領域番号 |
20K01057
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
生田 美智子 大阪大学, 大学院人文学研究科, 名誉教授 (40304068)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日ソ戦争 / 樺太残留日本人 / 樺太残留朝鮮人 / 民族の融合 / 日本の植民地支配 / 引き揚げ / 国境の植民地 / 多層移住民 |
研究実績の概要 |
シベリア抑留からの引揚者は100歳近くになっており、探し出すのが容易ではない。読売新聞に利尻島在住の96歳の男性抑留体験者のことが掲載されていたので、新聞社に連絡をとり、事情を話して、抑留体験者の連絡先を教えていただき、利尻島に出張した。残念ながら、引き揚げ体験女性を利尻島で探したが見つけることが出来ず、男性の抑留体者に聞き取り調査を行うことができ、有益であった。 週刊誌にサハリン残留日本人のことが掲載されていたので、名前をたよりにサハリン日本協会に国際電話をかけて、残留日本人と元日本国籍・残留朝鮮人の連絡先を教えていただき、国際電話をかけてアポイントを取ったうえで、ユジノサハリンスクに出張した。 日ロ関係悪化の影響で、普通なら2時間半で行けるユジノサハリンスクへのフライトが中国経由の便しかなく、2日かかってユジノサハリンスクに到着した。 ガイド付きの車を雇い、ユジノサハリンスクに残る日本統治時代の痕跡地を訪れ、真岡神社跡や破壊された忠霊塔、日本人の犠牲になった朝鮮人の慰霊碑、対日戦の戦士の記念碑を見学し、保存状態から軍国主義時代に日本に対する感情を読み取ることが出来た。 聞き取り調査に関しては、ホテルに残留日本人、元日本国籍の残留朝鮮人ご夫妻に来ていただき、聞き取り調査を行うことが出来た。現在のユジノサハリンスクでは混血があたりまえなので、日本人、朝鮮人、ロシア人だという認識はほどんどなくみんな同質になっているとのことであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
利尻島への出張では残念ながら対象となる女性抑留体験者がいないとのことで、聞き取り調査を行うことがかなわなかったが、男性抑留者に聞き取りをおこない、女性抑留者の状況をうかがうことができたのは有意義であった。 サハリンのユジノサハリンスクへの出張ではサハリン残留日本人、ならびに元日本国籍の朝鮮人ご夫妻に聞き取り調査を行い、貴重な体験談をうかがうことができた。 ホルムスクやコルサコフでは日本統治時代の半壊になった忠霊塔や日本人街の跡地を見ることが出来、当時の現地の人の日本人に対する感情をうかがい知ることができた。 日本時代の建造物からは、かつて中国でみた日本統治時代の建造物との類似性を見ることが出来たことも有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きシベリア抑留からの引き揚げ女性からの聞き取り調査を実施したい。 しかし、昨年末に以前から聞き取り調査をさせていただいたジャムス第一陸軍病院の女子挺身隊員(当時10代)だった最後の生存者の方が死去されたので、体験者からの聞き取り調査がかなり難しい状況になっているのは、いなめない。 引き続きシベリア抑留体験者本人を探し出して聞き取り調査をするよう努力するとともに、抑留体験者が書き残した手記などからその実態をうかびあがらせる。
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次年度使用額が生じた理由 |
日露関係が良好でないため、思うようにロシアに調査旅行をおこなうことができなかった。次年度はサハリンなどには渡航が可能なので、調査旅行をする計画をたてている。
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