研究課題/領域番号 |
20K01059
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
佐々木 博光 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (80222008)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協会 / 財団 / ネットワーク / 人材養成 / 商都 / 産業市民層 / ミクロ政治 / 鞍部期 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響で研究計画は大幅に遅れている。予定していた海外史料調査には一度も出かけられず、史料面の進展は全くなかった。また注文した洋書や公刊史料もほとんど届かず、ほとんどお手上げの状態であった。ひとつありがたかったのは、ハンブルクの近世の財団を扱った浩瀚な博士論文が届いたことである。同書は財団だけでなく、近世の協会にも相応な目配りがなされており、大いに参考になった。またかつて入手していたハンブルクの近代の財団に関する博士論文ももう一度熟読した。こちらも近代の協会について扱っており、前とは違った角度から読むことができた。両書で近世・近代を通じて協会は優れた人材を発掘する場と意識されている。これまで日本の西洋史研究では、ユルゲン・ハーバーマスの理解を受け入れ、協会とは議論の習慣を身につける場、民主主義の細胞のような役割を果たした場として語られてきた。このような通俗的な理解を覆すのが、当該研究課題の趣旨である。現地の歴史家たちは協会を日本の歴史家のようには見ていない。協会は名士が集い、有望な後進を発掘する場であり、そこに加入しようとする若者たちもそのような育成網にかかることを期待して参加していたのである。あとは史料的な根拠を積み増すだけである。海外出張が再び自由化されるのが待たれる。またハンブルクに関する2冊の研究書の購読から新たな研究課題も芽吹いている。古くからの商都であるハンブルクは大阪市と姉妹都市の関係にある。ハンブルク大と大阪市大は姉妹校で、わたしの本務校は2022年度に大阪市大と統合して新大学となる。わたしはハンブルク大学に同僚があり、統合にあわせて国際共同研究を組織できないかをかねてから相談していた。いま「東西商都の人材養成ー大阪とハンブルクの場合ー」という研究課題に浮上している。2025年の大阪万博にあわせ、このテーマで国際シンポジウムが開けないか画策中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響をまともに受け、当初予定していた海外史料調査を一度も敢行することができなかった。海外に発注した史料や書籍もまだ未着のものがほとんどである。想定外の事態の出来で、研究計画を予定どおりに遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の収束がいまだ見通せない状況下で、研究の推進方策を模索するのは難しい。初年度に繰り越した予算を有効に使い、集中的に海外調査をおこなうために、最終年度である2022年度の後期に長期の海外出張ができないか、現在本務校と交渉中である。2022年度が大阪市大との大学統合の初年度に当たることもあり、まだ大学からは確約を得ていない。何よりもEU圏の危険度レベルが1以下に下がるかどうかも見通せない。研究期間内に一度も海外史料調査の機会が得られず、思ったような成果があがらなかった場合、研究期間の延長を申請することも考えている。ひとまず今年度は当該テーマに関する先行研究を精査し、先行研究が依拠した史料の読み直しを進めることにしたい。研究蓄積が多い分野なので、その方法にも可能性があるかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために海外史料調査に出かけることができなかった。2022年度(最終年度)の後期に長期の海外史料調査を計画中である。それによって繰り越した額を使い、研究計画を一挙に進めたい。
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