研究課題/領域番号 |
20K01059
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
佐々木 博光 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (80222008)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協会 / 信心会 / ハンブルク愛国協会 / 縁故主義 / 口利き社会 / 財団 / ネットワーク / 閥族主義 |
研究実績の概要 |
昨年度に入手した研究書を検討した結果、当該課題についてハンブルクでの史料調査が有望であることが判明した。協会での活動がキャリアメイクのための縁故づくりに一役も二役も買っていたことを明らかにするために、約1か月間ハンブルクに渡航・滞在し、15日間を州立文書館での史料調査・収集に充てた。コロナ禍で到着後5日の待機期間があり、文書館が人数制限を実施しており、待機期間が明けてから利用までに1週間待たなければならなかった。そのようなハンディはあったが、館の方々の協力もあり、はじめての利用としては上々の出来であった。 1760年に誕生したハンブルク愛国協会の考察に必要な史料を収集した。この協会は現在も活動しており、現首相のオラーフ・ショルツ(ドイツ社会民主党)や副首相のロベルト・ハーベック(緑の党)も会員である。発足時からの協会の役員や協会に付属する助成団体の助成を受けた人たちのリストを作成することができた。この協会にかかわったことが、彼らのキャリアメイクにどのように役立ったのかを明らかにするのがつぎの課題である。 また現地史料調査の結果、若干課題の軌道修正も必要になった。最初の計画では近世と近代の協会活動を比較し、そこに連続が認められることを明らかにすることを考えていたが、中世来活動した信心会の寿命が思った以上に長く、近世にも信心会が相当な勢力を張っていたことが明らかになった。このため中近世の信心会の活動も、研究の射程に加える必要が生じた。研究課題の喜ぶべき拡張である。早速信心会の会員名簿を渉猟し、それについても重要な史料を入手することができた。今後は信心会への加盟が会員にもたらす恩恵を考察し、それが近世・近代の協会がもたらした恩恵と比較することが課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で初年度にまったく海外史料調査を実施することができなかった。おなじく発注した外書の納入が滞ったままで、研究対象を絞り込むのに大変時間を要した。今年度はようやく海外史料調査が、かなりの制約つきではあるが実現した。ようやく研究課題の考察が端緒についたというところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究を急ピッチで進めるために、最終年度は後期に調査目的地となるハンブルクに長期の渡航・滞在を予定している。本務校の理解も得られており、また受け入れ先のハンブルク大学には長く交流してきた研究者もおり、好意的に対応してくれる。コロナ下のさまざまな規制についても、すでにドイツは緩和の方向に向かっており、渡航が中止になることは考えにくい。短期滞在ではあったが史料調査が実施できた結果、扱う史料について感触もつかめている。遅れを一挙に挽回すべく努力する所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で夏季の海外渡航による史料調査を断念せざるを得なかった。また欧語文献の購入も昨年度に続き、納品が大幅に遅れている。やはり昨年度に続き、物品費と旅費に大幅な余剰が生じる結果となった。最終年度は、8月1日から翌1月末まで海外渡航・滞在による研究史料調査を予定している。当該助成金と翌年度使用分をそれに当てる計画である。
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