研究課題/領域番号 |
20K01059
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
佐々木 博光 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 准教授 (80222008)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 協会 / 兄弟会 / 縁故社会 / 閥族主義 / エゴ・ドキュメント / 日記 / フェルディナント・ベネケ / オットー・ベネケ |
研究実績の概要 |
近世・近代をつうじ兄弟会や協会といったソサイエティの活動がとくに活発であったハンブルクで、4カ月間史料調査に従事した。ハンブルク州立公文書館で、ハンブルク市の要職にあったもの、1293-1945年の正副市長177名、1245-1929年の市参事会員821名、1437-1920年の法律顧問82名、1351-1920年の市参事会書記124名をもれなくリストアップし、かれらの学歴、公職歴以外に、結社会員歴や財団役員歴のような民間における活動も調査した。調査はまだ端緒についたばかりであるが、将来要職につくものは盛んに結社に加入しており、そこでの縁で若くして財団役員に登用されるケースが非常に多いことがわかった。 さらにハンブルク市民ののこした日記や回想録を利用し、かれらにとって協会に加入することがどのような意味をもったのかをあきらかにした。とくにハンブルク州立図書館で公刊されたフェルディナント・ベネケ(1774-1848)の日記、ハンブルク州立公文書館でかれの子息オットー・ベネケ(1812-1891)の未公刊の日記と取りくんだ。新参者にとって、結社は人脈を築き縁故をえるための好個の場所と意識されていた。また中心的なメンバーにとっては、協会は人材を発掘しそだてるための場所であった。発掘された人材は財団役員に推薦され、さらにそこでもまれた。協会における人材の選抜には依怙ひいき、閥族主義、顔見知りかどうかといった要因が幅を利かすことが多く、公平性や透明性の点で問題があった。しかしこのひとりを育てるという課題には適していた。 協会のようなソサイエティは、議論の府、世論形成の場として機能し、社会の民主化の礎石となったしばしば評価された。しかしそれは縁故社会の牙城という性格がつよかった。透明性や公平性の点で問題のある組織が温存されたのは、人材養成という機能が尊重されたからにほかならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年と2021年はコロナ禍にあったために海外調査の機会がえられず、研究計画は大幅に遅滞した。2022年の3月にようやく海外史料調査の機会をえられたが、1週間のホテル待機、その後は史料館の座席予約がうまくゆかず、結果的に実質2週間弱しか調査をおこなえなかった。遅れを挽回するために、本務校の好意で5カ月間在外研究員として海外での史料調査に従事することができた。これによって、遅れを一挙に取り戻すことができた。 しかし数量化したいデータの量が膨大で、その作業に手間取っている。おそらくこれをひとりでさばききるのは至難の業であろう。今年度の出張機会を利用して、行論に最低限必要とかんがえられる一定程度の分量のデータを確保することにつとめたい。同時に将来このデータを網羅的に分析するために、共同研究チームの編成にとりかかりたい。 さらに成果報告書の作成に、あとしばらく時間を要するであろう。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も海外史料調査を敢行する。全部は無理としても、ある程度の関連史料の分析をこころみる。ハンブルク州立図書館で公刊史料、ハンブルク州立文書館で未公刊史料の解読にあたる。それにもとづいて研究成果報告書の作成に取りくむ。さらに、これまでは政治的リーダーの結社会員歴や財団役員歴を埋めることに終始したが、将来の共同研究の研究課題をにらみ、経済界のリーダー、軍事指導者や女性運動指導者の経歴を埋める作業にも着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年の12月末日まで現地での海外史料調査に従事したため、研究成果報告書の作成が間にあわなかった。ひとまず京都大学西洋史学科のオンライン誌『フェネストラ』に調査報告を寄稿したが、オンライン誌であるため経費は発生しなかった。研究成果報告のための費用がのこった。次年度使用額を海外史料調査のための日当、研究成果報告書の執筆・刊行費用、またそれに必要な『ハンブルク人名辞典』の購入に充当する。
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