研究課題/領域番号 |
20K01060
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ペルシア戦争 / 歴史叙述 / 記憶 / アイデンティティ / ギリシア人 / 年代記 / inventory lists / 聖域 |
研究実績の概要 |
2021年度も海外での資料調査、および現地調査をおこなうことはできなかった。2020年度から無期限延期となっているアテネでのワークショップの開催については、2023年度開催を目指して準備を進めてゆく。2020年10月開催予定だった第12回日韓中シンポジウムは2021年10月にオンラインにて開催され、The Memory of the Persian Wars and Its Use for the Creation of the Collective “Greek” Identityの口頭報告をおこなった。また9月にデルフィで対面開催予定だった2nd International Conference on Global Issues of Environment and Culture, 17-19 September 2021 (Sino-Hellenic Academic Project)についてもハイブリッド開催となり、オンラインにてKeeping the Sacred Landscape Beautiful and Elaborate: Maintenance of Sanctuaries in Ancient Greeceの報告をおこなった。ブラウン大学Adele Scafuro教授主導によるパネルSacred Landscapes: destruction, durability, location, change and maintenance through timeの中の報告である。これについては、2022年5月1日までにJournal of Ancient History and Archaeologyに同名タイトルの論文として公開された。 2021年度はとりわけペルシア戦争の記憶の継承の諸相について考察をすすめてきた。エフェベイア制度を共同体の記憶の継承の場としての役割に焦点を当てて考察した論文は、周藤芳幸編著『古代地中海世界と文化的記憶』(山川出版社、2022年5月刊行予定)に所収されることが決まっている。また、神殿宝物一覧や年代記の記載と歴史叙述とのかかわりについての検討に着手した。着手にあたり、「パルテノン」とアテナ女神聖財財務官の聖財記録をめぐる覚え書き:ファン・ロークハイジェン(J.van Rookhuijzen)の研究をめぐって」を寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査はできなかったものの、依頼を受けたものを含めて成果発表に関しては順調に公開にまでいたっている。とくに、今年度は記憶の継承の場としての聖域の役割、異なるメディアを介して共通の記憶が形づくられてくる過程について複数の成果をまとめることができた。海外学会で報告したものを海外査読誌に投稿し、掲載にいたったことも成果の一つとして上げられる。
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今後の研究の推進方策 |
アテネでのワークショップの開催について、2023年夏ないし秋の実施を目指して、あらためて先方との交渉をおこなう。おそくとも2022年夏までには概要を明らかにしたい。国内における国際ワークショップの開催についても11月を目指してはいるが、これについても新型コロナ感染症の感染状況によっては変更があるかも知れない。状況が許せば、2023年2月ころにギリシアでの現地調査とワークショップの対面での打ち合わせを実現したいと考えている。 個別研究の方向性としては、以下に焦点を当てていく。まず、ステロタイプ化されてゆくペルシア戦争の記憶の継承にエフェベイアが果たした役割についてより詳細な検討をすすめていく。また、聖域への戦争記念の奉納とそれをめぐる語りと記録がペルシア戦争の記憶の共有と汎用化にいかなる影響をあたえたかについて検証を進めていく。それぞれ、随時、関連の研究会で報告するとともに論文の形で公開していくべく研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査に出かけられていないため、また、国内外の研究者を招聘してのワークショップが対面で開催できていないため、残額が生じている。海外調査、およびワークショップ開催については、それぞれ2022年度中もしくは2023年度には実施することを目指しており、そのためにもあえて残額を出している状況である。一方、当初よりも物品費の使用額が増えている。これは、国内のみならず海外学会へのオンライン参加が増えたこと、実地調査に変わりデジタルデータを使って研究を進めていることから、高性能のPCの導入が必要となったからである。
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