研究課題/領域番号 |
20K01064
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
武田 和久 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (30631626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イエズス会 / グアラニ先住民 / 布教区 / 洗礼簿 / 住民名簿 |
研究実績の概要 |
本年度は研究初年度ということもあり、基礎研究への取り組みに重点をおいた。具体的には、南米大陸南東部に位置し、現在のパラグアイ共和国内に存在する小村サンタ・ロサ(元はスペイン植民地時代にイエズス会宣教師によって建てられた先住民改宗施設。当時は布教区と呼ばれた)にかかわる洗礼簿のデータベース化ならびにその内容の整理・分類に集中的に取り組んだ。 この洗礼簿には生後間もなく洗礼を受けた先住民グアラニの氏名、父母の氏名、洗礼を施したイエズス会宣教師の氏名といった情報が時系列的に記載されているが、とりわけ興味深いのは、代父ならびに受洗者の母親の出身カシカスゴに関する記述である。 代父とは、受洗者の実の父母に不幸があった時などの非常時において、孤児となった受洗者を引き取って実の子と同じように養育する責任を負う義理の父に相当し、カトリックにおいては洗礼時に任命される重要な後見人でもある。サンタ・ロサ布教区洗礼簿を見ていくと、特定の男性グアラニが繰り返し代父となっているケースが相当数見受けられる。そしてその一方で、非常にまれに代父として登場する男性グアラニがいることがわかった。こうした違いが一体何に由来するのか、次年度以降に明らかにしていく。 またカシカスゴとは、「親族集団」と訳すことも可能な、布教区で暮らす全てのグアラニが所属する組織(ユニット)であり、そうした個々の組織はカシケと呼ばれる首長によって統括されていた。母親が元々どういったカシカスゴを出自としていたかという情報が洗礼の度にもれなく記載されていたという事実は、この情報が布教区においてそれだけ重要だったことを示しており、こうした問題についても二年目以降の研究で明らかにしていきたい。 そしてこうした研究と並行して本年度は、パラグアイのイエズス会布教区に関するスペイン語文献の翻訳も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中核となるサンタ・ロサ布教区のデータベース化ならびに内容の分析は日々進んでおり、現時点において相当に興味深い結果が出てきていること、洗礼簿とフォーマットの面で酷似するアメリカ先住民を対象とした貢納台帳史料に精通する専門家の助言を元に洗礼簿の分析を進めていること、こうした状況を総合的に判断して、研究期間内に一定の研究成果を出せる見込みがあるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の二年目には、初年度に行った洗礼簿の分析結果を学会や研究会において試験的に公表し、コメントをもとに最終年度に向けて論文執筆の準備を進める。あわせて、サンタ・ロサ布教区洗礼簿の内容を補完ないし比較するうえで、その他の洗礼簿についても調査・分析を進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて予定していた海外調査が実施できなかったため。感染拡大が収束に向かう兆しが出た時点で調査実施に向けての準備を進める。
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