研究課題/領域番号 |
20K01064
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
武田 和久 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (30631626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イエズス会 / グアラニ先住民 / 布教区 / 洗礼簿 / 住民名簿 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度までの研究を踏まえて、日本ラテンアメリカ学会第43回定期大会(同志社大学)において「イエズス会サンタ・ロサ布教区(現パラグアイ)洗礼簿(1754-1764)―受洗者の母親の所属カシカスゴに関する試論―」という題目の下、同布教区洗礼簿に表れる受洗者の母親の所属カシカスゴという情報がいかなる意味において重要だったのかを試験的に報告した。この情報の重要性は、パドロンと呼ばれる住民名簿と洗礼簿を比較分析したことで明らかになった。具体的には、新生児の成長過程をパドロン上で時系列的に辿ることで、当該人物がどのカシカスゴに所属していたのかを突き止めていった。興味深いことに、パドロン上で所属カシカスゴを辿れる新生児については、パドロンが現存する少なくとも1772年から1801年までは、その母が属していたカシカスゴに成人後も同じく所属し続けていたことが明らかになった。すなわち、新生児の属性が母親のそれと紐づけられていたのである。 こうした紐づけの起源がどこにあるのかは今後の研究に委ねないといけないが、現時点で言えるのは、グアラニ先住民に特化した現象ではないということである。例えば植民地期中米のグアテマラ総督領に関する研究では、首長身分や納税対象といった属性が母親に備わっている場合、それがその子供に受け継がれていたことが解明されている。このことを考えると、母親の属性を新生児が受け継ぐという状況は広域的な現象だったことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで進めてきた研究に基づき2023年2月から3月にかけて論文の執筆を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で言及した論文を投稿し、査読が終わった後で種々の点について加筆・修正を進めていく。また並行して、サンタ・ロサ布教区洗礼簿の分析を進める過程で現在のブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州の州都ポルト・アレグレ近郊のカマクアで1765年に作成された洗礼簿の存在がわかってきたので、これの分析とデータの収集を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
洗礼簿中に出てくる各種情報は緻密かつ詳細で、その抽出にはかなりの時間を必要とする。そのために研究期間を1年延長し、2023年度も引き続いてデータの抽出を行うための資金を確保するため、このような次年度使用額が生じた。
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