研究課題/領域番号 |
20K01065
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
豊川 浩一 明治大学, 文学部, 専任教授 (30172208)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プガチョーフ叛乱 / オレンブルク遠征 / 古儀式派 |
研究実績の概要 |
本研究の課題に沿って2021年度の研究は進められた。しかし、新型コロナウィルスの新種株の感染拡大により、国内外の学会が対面式ではなく、オンライン方式に変わっていった。本研究もその影響を受け、発表予定の国際学会が中止になり、計画の変更が余儀なくされた。そうしたなかでも、研究の実績を上げることに専念できたのは、国内での研究に主眼を置いたためである。また、学会がオンライン方式に変わったことによって、自身の研究成果を確かめることができた。 第1に、1年を通じて研究文献と資史料の収集に努めながら、従来の研究の整理を行なった。第2に、延期となっていた「第10回国際東中欧研究協議会2020年大会」は、2021年8月にオンライン方式で行われた。延期期間中に、いま一度史料を読み直し、また発表原稿に修正加筆した。第3に、予定していた年度末のロシアにおける古文書・文献の調査、および研究者との意見交換のための外国出張を中止し、北海道大学付属図書館およびスラブ・ユーラシア研究センターに出張して、詳細な調査をした。 その結果、ロシア語論文「オレンブルク遠征の活動とプガチョーフ叛乱の原因・帰結との関係)」『国際学術コンフェランス報告集』(ウファー、2021年)を刊行し、また『第10回国際東中欧研究協議会2020年大会』(2021年8月3日、Zoom開催)では「プガチョーフ叛乱期の古儀式派と旧教徒たち」というテーマで、また『日露交流研究会』では「「大航海時代」のロシアと日本の交流―ラクスマン使節日本派遣の背景を探る」(2021年12月4日、Zoom開催)というテーマで報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の経験を活かして、国内でできる研究の量と質を高めることを目指した。 第1に学会発表についてである。今年度8月に延期されていた「第10回国際東中欧研究協議会2020年大会」では、オンラインで「プガチョーフ叛乱における古儀式派の役割」と題して報告することができた。これは今年度最大の成果のひとつであるが、今年度に延期されたことにより4月から7月まで報告準備に集中することができ、研究文献と資史料のさらなる収集に努めながら、研究のより詳細な分析を行うようにした。6月にオレンブルク農業大学付属「大尉の娘」博物館主催の国際シンポジウムで予定していた報告は、新型コロナの影響で中止せざるを得なかった。そこでは、イデオロギーのいまひとつ重要な論点である、政府の推し進めた近代化に反対して叛乱参加者が目指した「自由」について論じる予定であった。ロシア人研究者との意見交換の貴重な場であったが、オンラインによる参加方式がなかったために参加できなかった。 第2に、研究論文の刊行である。上で述べたように、ロシア語論文「オレンブルク遠征の活動とプガチョーフ叛乱の原因・帰結との関係)」を刊行した。これは、前年度と当該年度前期まで行ってきた研究文献と資史料収集およびその分析の成果である。 第3に、古文書・文献の調査および研究者との意見交換についてである。ロシア出張は中止せざるを得なかったものの、国内で詳細な調査をするために、北海道大学付属図書館およびスラブ・ユーラシア研究センターに出張することができた。 第4に、外国人研究者との意見交換である。直接外国人研究者との研究交流を通して研究の質的向上を図ることはできなかったものの、電子メールその他の間接的な手段で現在の研究の位置を確認し、それを深化させることができた。 以上のように、研究全体の縮小や変更を余儀なくされたが、国内で行うことのできる研究に集中した。
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今後の研究の推進方策 |
まだしばらく新型コロナウィルス感染状況が続くことが予想される。加えて、ウクライナ戦争が長引くのではないかと思われる。ロシアを研究対象とする者としては大変な打撃であるが、今後も以上のような状況を見ながら臨機応変に研究を展開することになろう。 従って、今年の研究は以下のような方法をとることになる。第1に、4月から9月まで前年度の研究の成果を整理しながら分析を加え、これを1年を通じて行うものとする。というのも、4月から9月まで、ヘルシンキへの短期在外研究の機会を得たので、研究に集中できるからである。同地のスラヴォニック・ライブラリーを利用して、前期の作業を集中的に行う予定である。第2に、研究内容をさらに精密にして発展させるための文献調査を目的に、9月か10月に北海道大学付属図書館およびスラブ・ユーラシア研究センターに出張する。そこでの研究交流も研究推進にとって大きな役割を果たすであろう。第3に、研究論文の作成である。1と2を通して、分析を総合しながら研究の成果を示すことになろう。これは、『駿台史学』に掲載する予定である。さらには、海外でレヴューを受けるために、研究テーマに沿って書き溜めてきた日本語論文の外国語への翻訳作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ここ数年続いた新型コロナウィルスの世界的感染状況により、海外に出張して行う研究が自粛を求められたのが大きな理由である。さらには、2021年2月24日に始まった、ウクライナ戦争により、ロシアへの出張が困難になったことも理由である。 そのため、次年度においては、研究成果を広く公開するべく、学術誌などへの投稿のため、およびシンポジウム参加のため、今まで日本語で発表してきた研究成果を外国語への翻訳を進める予定である。また、徐々に緩和されてきている海外への出張を再開させて、研究の促進を図る予定である。
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