研究課題/領域番号 |
20K01067
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
梅崎 透 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (30401219)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アメリカ / 社会運動 / 民主社会主義 / ラディカル・ポリティクス / 新自由主義 / ニューアメリカン・ムーヴメント |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症拡大の影響でアメリカ合衆国に渡航しての現地史料調査は実現できなかったが、次のような研究成果の発表を行った。①アメリカ学会年次大会シンポジウム「表現の自由と不自由のあいだ」において、パネリストの一人として、1960年代以降のアメリカの対抗運動の文脈において、フリースピーチやヘイトの問題を整理し、議論した。②『よくわかるアメリカ史』(ミネルヴァ書房、2021年6月)を共編執筆し、刊行した。アメリカ史を通史的に理解するテキストではあるが、21世紀からさかのぼって歴史を再構成する試みであり、近年の学知をふんだんに盛り込んだ。③『国際問題』701号(2021年6月)において、「アメリカ政治のパラダイム変化はあるか」と題して、近年の民主党左派と新たに誕生したバイデン政権について分析した。④『国際問題』701号刊行をうけ、7月13日に日本国際問題研究所主催「『バイデン政権の課題』を論じる」Web会議にパネリストとして参加した。⑤『フェリス女学院大学文学部紀要』57号(2022年3月)において、「ポスト冷戦期におけるアメリカの位置」と題して、反「帝国」/反グローバリゼーション運動の系譜から、アメリカのポスト冷戦期を論じた。⑥『ヘイトに抗するアメリカ史』(彩流社、2022年4月)において、「ミレニアルズとZ世代」と題して、新たな左派の世代政治を論じた。このほか、共同通信社や『上毛新聞』のインタビューを受け、研究成果を広く共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、実証研究の基盤となるアメリカ合衆国に渡航しての史料調査が実現できなかった。入手できる一次資料が大幅に制限されたため、あらためて二次文献の調査に重点的に取り組み、研究史の整理を行った。可能な限りの調査から得られた成果は、学会報告や論文、書籍等において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、アメリカ合衆国での史料調査が実現することを期待する。なによりも、ニューヨーク大学タミメント・ライブラリー所蔵のニューアメリカン・ムーヴメント関連文書の調査を開始する。このほかの重要な文書館についても、直接の訪問や、複写(紙媒体、デジタル媒体)の購入を積極的に行う。その上で、これまでの二次文献調査とあわせ、保守化が進んだと言われる1980年代における左派の政治文化を明るみにし、それが現在の社会状況にどのように影響しているのか分析する。とくに、2020年代に至ってアメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of America, DSA)やDSAに支援される民主党左派の政治が躍進する状況をふまえ、20世紀後半の左派政治の系譜を思想と社会構造からあらためて検証する。1960年代の社会運動が静まりつつある1970年代にニュー・アメリカン・ムーヴメントが組織され、さらに1980年代にDSAが結成されたことは、現在のアメリカの左派政治を理解する上で重要な結節点となる。その成果は、学会報告、論文、書籍等で発表する。関心の近い研究者とのネットワーク作りを引き続き行い、成果に対するフィードバックを受けながら、当該研究の妥当性と重要性を確認し、今後の分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、アメリカ合衆国で実施予定であった現地史料調査が不可能となり、旅費支出が0円となった。次年度使用額については、ニューヨーク市他での史料調査や史料調査にあてる。また、2022年度補助金は当初予定の目的で支出する。
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