本研究の目的の一つ目は当該期・当該域の鉄製品の流通及び普及の解明である。具体的な研究方法としては、弥生時代の加工用鉄製品を復元製作し、それによる鹿角の加工実験の成果から鉄製品による鹿角の加工痕を明確化し、その加工痕の追求から上記の目的を達することである。令和5年度は令和4年度に実施した加工実験の成果の一部を公表するとともに、加工痕の詳細を検討するための関係者による研究会を5月に開催した。また加工痕の詳細を客観的に公表するための三次元計測を株式会社ラングに依頼した。 二つ目は東北北部の伐採用厚斧の系譜を明らかにすることである。この点については、令和4年度までに必要な調査が終了しているため、令和5年度の実施事項はない。 三つ目は当該期の東北北部と北海道との生業にかかわる関係性を把握することである。令和5年度は、両地域の関係性が密接となる弥生時代後期の土器に残された穀物痕のレプリカ法による検討を岩手県埋蔵文化財センターにて実施したが、当該期の穀物痕を検出することはできなかった。
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