研究課題/領域番号 |
20K01075
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
宮里 修 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (60339645)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 居徳遺跡 / 低地利用 / 貯蔵穴 / 種実 |
研究実績の概要 |
2020年度は主要な研究対象である居徳遺跡に対する発掘調査を実施した。居住域の探索に必要な旧地形の把握を目的として、地割りと踏査による確認をもとに高岡町居徳ヶ端1918・19・20番を対象とし、まず8月3~6日の日程で、地形測量と検土杖を用いた簡易ボーリング調査を実施した。簡易ボーリング調査によって把握できた埋没丘陵の位置と傾斜をもとに、幅5m、長さ10mの調査坑(T2)を設定し、9月7~23日の日程で発掘調査を実施した。T2では地表下50㎝に埋没丘陵である地山があり、T2内南縁の地形変換点から南西に向かって低まる傾斜を確認した。地形変換点の低位側には縄文時代もしくは古墳時代と考えられる黒色粘土層の堆積を確認するとともに、5基のピットを確認した。出土遺物は極めて乏しいが古墳時代の土器・須恵器が数点出土した。丘陵上の包含層・遺構はすでに削平されたと考えられるが、ピットの存在が示すように低地部の土地利用痕跡が遺存する可能性が高く、居住域の広がりを示す手掛かりとしてさらに追求していきたい。調査で検出したピットには縄文時代の貯蔵穴である可能性があったため、覆土をすべて持ち帰り水洗選別をおこなったが、微小な種実を検出したのみで堅果類をはじめとする植物は確認できなかった。今次の調査で埋没丘陵の位置をおよそ把握することができたが、同時に丘陵頂部は削平により相当部分が湮滅したと考えられる。新たな地点を模索するとともに、低地部の利用方法を追求することで居住地の広がりを把握する方向性をもつ必要がある。 コロナ禍の影響で集中的な整理作業が実施できなかったが、既往調査の出土品である居徳遺跡4D区出土土器のうち、縄文後期の資料について資料化(実測・拓本)を進めた。縄文後期土器の出土量は高知県内でも屈肢であり、その具体的な内容を共有できるようさらに整理を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発掘調査では旧地形こそ把握できたが、研究対象とする縄文時代の明確な包含層・遺構が確認できておらず、今後の計画をたてる上での確かな指針が得られていない状況である。この問題については発掘調査を効果的に継続する他ない。 本来であれば土器を中心とした関連資料の調査に出掛け、多くの比較資料が得られるはずであったが、コロナ禍の影響による移動制限により、資料調査を行うことができなかった。状況が改善されたところで、予定していた北陸・滋賀への資料調査を21年度に行い、計画の遅れを取り戻す。 居徳遺跡既調査出土資料の資料化作業も、人を集めての作業が実施できなかったため、大幅に進度が遅れている。こちらも状況をみて順次進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
発掘調査については、20年度の成果の延長線上で、T2に接する南西側位置に調査坑を設定し、低地部における土地利用の広がりを追求する。地山直上の黒色粘土層の時期比定を課題とし、遺構・遺物の発見を目指す。20年度は埋没丘陵の西縁を把握したが、21年度には東縁の位置を確認するため、検土杖を用いた簡易ボーリング調査をあわせて実施する。低地利用が課題となるため、貯蔵穴および植物遺存体の関連研究を渉猟し、南四国における縄文時代の環境適応、低地利用の歴史性を検討する。 刻目突帯文土器と浮線文土器が共存する福井県若狭町曽根田遺跡を手掛かりに、突帯文系と東日本系の境界地域における様相の検討を研究課題とし、滋賀と福井の遺跡を集中的に整理・検討する。居徳遺跡出土の北陸系土器の系譜、土偶・漆器の変容をはかる足掛かりとしたい。研究の進展にしたがって、石川・長野・福島へでの資料調査を視野に入れる。 整理作業は資料的まとまりが良好な居徳遺跡4D区出土縄文後期土器の資料化を継続して進める。
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