研究課題/領域番号 |
20K01075
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
宮里 修 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (60339645)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 居徳遺跡 / 磨研鉢 / 土偶 / 東日本系 |
研究実績の概要 |
居徳遺跡の発掘調査を実施した。前年度の調査で把握した埋没丘陵の延長部分に新たな調査坑を設定し、縄文時代包含層の検出をはかった。古墳時代の包含層上面で旧地表面の土壌化を確認し、調査方法についての指針を得ることができた。古墳時代包含層を40cm程度掘削したが、依然として縄文時代層には到達していない。次年度の調査でさらなる深部の掘削をおこなう必要が生じ、叉状に分かれ小谷を形成している西側斜面に調査坑を長く設定し、土壌化部分に注意しながら調査を進めることが課題となる。。 居徳遺跡4D区および倉岡遺跡出土資料の資料化作業を進めた。居徳遺跡では縄文後期土器を中心に、倉岡遺跡では縄文晩期土器を中心に実測作業を進めた。深鉢を中心に一定度の数量を積み重ねることができたが、次年度はさらに点数を加え、製図作業をあわせておこない、できるだけ多くの資料を成果報告書に盛り込めるよう努める。 縄文晩期磨研鉢の分類と編年についての論文を発表した。前年度に発表した深鉢論文と組をなす内容で、これら2編により、南四国の縄文時代晩期系土器を9つの段階に区分して把握することが可能になった。従来、具体的な様相が明らかでなかった凸帯文土器の終焉を、8・9段階として整理することができた。 南四国出土土偶の系譜についての論文を発表した。居徳遺跡出土土偶および関連する田村遺跡出土土偶の系譜を東北や北陸、近畿・東海の事例と関連づけて整理した。結果、先の8・9段階に、時期を追って系譜のことなる土偶が順次移り変わっていく様相を把握することができた。 さらに東日本系土器の系譜を明らかにすることで、縄文文化の伝統を保持した居徳遺跡をめぐる地域間関係がいっそう鮮明となることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発掘調査については、居徳遺跡の旧地形を順調に解明できているが、深部にある縄文時代包含層に達することができず課題が残る。基本層序と包含層の状態を詳しく把握出来ているので、有効な調査坑を設定し調査にのぞむ。 居徳遺跡4D区と倉岡遺跡については、それぞれの特徴を網羅する資料の実測を進めているが、対象となる資料が多く、すべてを図化することは難しい。資料を選択し確実に締め括ることが必要となる。 研究においては、年代軸が整理でき、土偶の系譜を明らかにすることができた。のこされる課題は東日本系土器と漆器の系譜であるが、まだ見通しが十分にたっていない。継続して取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が締め括りとなる。発掘調査は西方向に斜面を長く対象とする調査坑を設定し、従来よりもさらに50cm以上深部の層を調査する。既往調査区と同様に、古墳時代層の下部に縄文時代包含層が存在することを確認したい。 資料化作業は、諸型式・諸形態が網羅できるよう資料を再度選別し、実測・トレースを進め、確実に作業を締め括る。 研究においては、東日本系土器の系譜を対象に調査を進める。北陸の糞置式、乾式、中部高地の浮線文土器が比較対象となる。資料調査を実施し比較検討をおこなう。
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