当初実施課題として設定した、(1)発掘調査、(2)関連資料の資料化、(3)東日本系資料の系譜探求について、(1)の発掘調査では、これまでの成果を活かし、土壌化した旧地表面をひろく検出し、排水への対応をはかりつつ遺物包含層を一定度深く掘削することができた。結果、対象としていた弥生前期の土器を検出することができ、縄文・弥生移行期の居徳遺跡の活動域が背後の丘陵部方面へも広がっていることを確認できた。背後の丘陵から既調査の埋没丘陵をつなぐ部分の旧地形について、支脈をもち小さな谷を形成する中間地帯の旧地形を詳しく把握することができた。ただし、これまでに実施した以上の深部の掘削はより大規模な掘削と排水とを必要とするものと認識した。(2)の資料化ではこれまでに進めてきた実測資料のトレースを進め、また写真撮影をおこない、報告図版を作成した。ただし、途中コロナ禍により整理作業が著しく遅滞したため、抽出した資料の多くは資料化に至らず、倉岡遺跡出土資料もトレースに入ることができなかった。(3)の系譜問題については、期間中の成果である、深鉢・磨研鉢の分類・編年を軸にした時間軸の整理、土偶の系譜を東北・北陸・近畿・西日本の複合的な系統変化としての整理をもとに、最終年度は居徳遺跡出土の東日本にとどまらない異系統土器の系譜問題をあつかった。資料調査をかさねて、これまで詳細不明であった土器片を香炉形土器と特定するとともに、東北・北陸・東海・山陰の要素が、変容を重ねながら南四国に伝えられ、在地の土器のなかにとりこまれた様相を明らかとした。漆器の問題は残したが、居徳遺跡の系統について多くのことを明らかにすることができた。
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