本研究では弥生時代の卜骨、骨角製品の悉皆的な調査研究によって、弥生時代中期後半の稲作農耕に特化した定住集落の出現と同時に広域を遊動する海人集団が現われたことを明らかにした。遊動集団は定住集団が必要とする物資や情報を提供し、定住集団は遊動集団へ農作物を提供するという相補的な関係が弥生時代中期後半に発生したと考えられる。古墳時代以降の王権は遊動集団を統制し、定住集団へ提供する物資や情報をコントロールすることで広域統合社会を実現していったと想定できる。本研究の学術的意義、社会的意義は、これまで注目されてこなかった遊動集団と王権、国家の関係について考古資料の分析に基づいて一定の見通しを示した点にある。
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