研究課題/領域番号 |
20K01090
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中原 計 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (20398027)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 山陰地方 / 木材利用 / 用材 / 年代測定 |
研究実績の概要 |
鳥取県東部の遺跡から出土した、縄文時代~近世の木質遺物164点について、分析を行い、それらの樹種を明らかにした。木製品の中でも、農耕土木具、建築材については、これまで山陰地方で知られていた用材傾向と一致していた。一方で、斧台座や下駄では、他地域では類例があるものの、鳥取県内ではこれまで利用例がみられなかった樹種が確認できた。 土木材については、縄文時代~近世における樹種の変遷をある程度明らかにすることができた。具体的には、縄文時代~中世においては、広葉樹の利用が主であったが、近世になるとマツ属のみになることが明らかとなった。広葉樹の中では、シイノキ属、クリ、ヤブツバキの利用が比較的多く、山陰地方の森林植生の主体を占めると考えられた。また、マツ属の利用については、山陰地方においても、周辺植生の状況によっては、弥生時代~中世においても多少利用割合が高くなること、中世~近世のどこかの時点でマツ属が有用材と認識され、積極的に利用されるようになることが分かった。 加えて、弥生時代以降スギの転用材の利用が増加し、多くは建築部材として利用されていたものが、土木材として転用されていること、古代の資料に、ウツギの利用がやや目立つことから、鳥取県における比較的新しい時期の土木材の特徴の一つとなる可能性が指摘できた。 また、土木材については、その樹種変遷を詳細に明らかにするために、試料のうち10点について、AMS法による放射性炭素年代測定を行った。その結果、弥生時代中期中葉、弥生時代後期~古墳時代前期、中・近世の絶対年代を概ね明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、縄文時代から近世の資料について、時代の古いものから順番に分析を行う予定であったが、時代に関わらず、分析が可能になったものから順次分析を行うこととした。ただし、分析点数としては、予定通りであり、分析できた時期における木材利用についての情報を得ることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、年間200点程度の木質遺物について、時代にこだわらず分析を行うとともに、年代測定を行い、山陰地方における木材利用の変遷の詳細を明らかにしていく予定である。 特に、本研究の目的の一つである、マツ属の有用材化については、その時期や要因について、より詳細に検討していく。 また、明らかになった状況が、山陰地方に特有のものであるのか、普遍的なものであるのかを検討するために、他地域の資料についても分析を行い、比較を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プレパラート作成のための消耗品の消費が当初の予定よりも少なく、それらの物品を手持ちのものでまかなえたため。 次年度において、年代測定の経費や消耗品の経費として利用する予定である。
|