鳥取県東部の遺跡から出土した木質遺物209点について、樹種分析を行い、それらの樹種と用材傾向を明らかにした。また、それらのうち12点について、AMSによる放射性炭素年代測定を行った。 出土木質遺物の器種は、容器類、建築部材、土木施設材である。容器類は、古代・中世の曲物で、これまで知られている用材の傾向と一致していた。建築部材は、高住宮ノ谷遺跡、常松菅田遺跡、下坂本清合遺跡、因幡国府跡から出土した古墳時代~中世の掘立柱建物の柱材であり、因幡国府跡の平安時代の資料を除いては、前年度までと同様にクリが最も多く利用されており、鳥取県東部における柱材の樹種選択であることが分かった。因幡国府跡の平安時代の資料は、この傾向とは異なり、ヒノキが主体を占めており、国府という遺跡の性格が反映していると考えられた。 土木施設材は、青谷横木遺跡出土の縄文時代晩期後葉~弥生時代前期の杭であり、これらについても、前年度までと同様にカヤを中心とした樹種選択であったことが明らかとなり、当該期の樹種選択のありかたがより明確に示された。 年代測定については、12点についてAMS法による放射性炭素年代測定を行い、絶対年代を明らかにした。一部辺材が失われている可能性を示す資料があったが、概ね想定していた年代に近い値であった。
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