研究課題/領域番号 |
20K01095
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
丸山 真史 東海大学, 海洋学部, 准教授 (00566961)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家畜 / 動物考古学 / 王権 |
研究実績の概要 |
本研究は、古墳時代の王権と関連する西庄遺跡から出土した動物遺存体の検討を通じて、食用家畜となるブタ、ニワトリに注目し、その生産と利用の実態を解明することで、王権と家畜の関係を明らかにすることを目的としている。 今年度は、3年計画の2年目にあたり、分析資料の抽出作業等を終了し、資料の形態学的観察による同定や計測、写真による画像記録などの作業、および一部の資料について理化学的分析を実施した。 イノシシとブタについての形態学的特徴の観察によれば、家畜化による明確な骨格部位の変形はみられない。一方、ニワトリを含むキジ科の骨には家禽化されたニワトリの形態的特徴がみられるものが含まれている可能性が見出された。これらのうち、イノシシあるいはブタの区別をする一つの指標として、給餌個体かどうかを判別するために炭素・窒素安定同位体による食性分析を研究協力者に依頼し、結果を得ることができた。当分析では、明確な給餌個体は存在しないということが明らかになった。一方、弥生時代の唐古・鍵遺跡から出土したイノシシあるいはブタの観察を実施したとこころ、歯周病を患っている個体やストレスマーカーとなるエナメル質減形成が生じた個体を見出し、飼育個体が存在していることを予想するに至った。このような弥生時代には飼育個体がいるにもかかわらず、古墳時代には飼育個体が存在しないという興味深い状況を見出すに至った。ただし、西庄遺跡における安定同位体分析の結果が、即家畜の不在を示すとも限らないことに注意を要し、研究計画の最終年度には、他の要素を含めて総合的に解釈を深めていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね当初の研究計画通りで、分析資料の抽出等を昨年度に引き続き行いながら終了させ、イノシシあるいはブタの資料については、炭素・窒素安定同位体分析の結果を得ている。一方、ニワトリの可能性があるキジ科鳥類骨のコラーゲンタンパク分析により、キジやヤマドリなどの野鳥と家禽のニワトリを峻別する予定であったが、記録写真の撮影作業が遅れ、分析に着手できいない状況である。ただし現在は、その準備も終了し、分析に着手する段階にまで至っているおり、3年での研究計画に大きな支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まで継続した分析に供する資料について、抽出作業は終了しており、西庄遺跡から出土している家畜に関連する動物遺存体について、分析・検討・解釈のための資料整備が整った。昨年度に実施ができていない、野鳥のキジ、ヤマドリか家禽のニワトリを峻別を最優先で実施する。そのうえで、西庄遺跡における家畜の存否、野生種と家畜種との量比、出土状況等を勘案し、弥生時代との比較を通じて、王権がどのように家畜生産や利用に関与していたのか研究協力者とともに解釈を行う。また、その際に西庄遺跡総体の実態解明、古墳時代の手工業生産を専門とする研究協力者の助言をもらい、解釈を深め、結論を導く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
形態学的特徴の観察および遺跡資料の同定に使用する現生骨格標本が海外からの輸入になり、国内への搬入が遅れたため次年度に標本購入を見送り、次年度に使用することになったため。
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