本研究は、古墳時代の王権と関連する西庄遺跡から出土した動物遺存体の検討を通じて、食用家畜となるブタ、ニワトリに注目し、その生産と利用の実態を解明することで、王権と家畜の関係を明らかにすることを目的としている。今年度は、3年計画の最終年度にあたり、資料の形態学的観察による同定や計測、写真による画像記録などの作業を終えて、これまでの3年間において実施した理化学的分析を実施した結果等のまとめを行った。具体的には、これまでに西庄遺跡における家畜の存否、野生種と家畜種との量比、出土状況等を検討することで、弥生時代との比較を通じて、王権がどのように家畜生産や利用に関与していたのかの解釈を試みた。 古墳時代の西庄遺跡では形態学的特徴から明確なブタが存在することを指摘することは難しく、炭素・窒素安定同位体分析による食性分析からも明確に飼育個体が存在することも示されなかった。また、キジ科およびニワトリについては、明らかに野生のキジ、ヤマドリと同定できるものがありながら、ニワトリの可能性が高い個体も検出した。一方、弥生時代の唐古・鍵遺跡では、歯周病を患っていたり、歯列に歪みが生じているような飼育を示唆する個体があり、また、弥生時代中期の年代が確実な日本最古のニワトリも出土している。しかし、このような動物飼育が確実視できるとしても、野生のイノシシやキジやヤマドリも出土していることは、家畜化の保有が即座に、家畜に大きく依存した動物利用に転換することはなかったことを如実に示していることは明らかになった。
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