研究課題/領域番号 |
20K01104
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
石黒 直隆 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 客員研究員 (00109521)
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研究分担者 |
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (30432016)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ニホンオオカミ / イヌ / ミトコンドリアDNA / ゲノム / 系統解析 |
研究実績の概要 |
絶滅したニホンオオカミは、謎の多い動物である。その理由の一つが、国内に残る標本数が少なく解析が進んでいないのが原因である。これまでに、我々は、形態的にニホンオオカミと同定された骨標本からDNAを分離・精製し、遺伝的な系統関係をミトコンドリアDNA(mtDNA)から明らかにしてきた。それにより、ニホンオオカミは、mtDNAのDループ部位の8塩基の挿入/欠失により2群(A群、B群)に型別され、分布に地域的な偏りがみられた。本研究では、大陸より日本に渡来後、系統分化したニホンオオカミの系譜について、国内各地の骨標本を幅広く解析し、時代と地域性から国内でのニホンオオカミの系統進化を明らかにすることである。新型コロナウイルスの感染拡大により、全国的な解析には至っていないが、今年度は中部圏の標本に関して解析することができた。 愛知県豊橋市で見つかった標本は、江戸~明治のものであり、形態的にもニホンオオカミであり、mtDNAの解析では8塩基を有するA群に属した。解析したmtDNAの配列からは、長野県の標本に近い配列を示した。また、長野県の大町市で見つかったヤマイヌの牙についてもDNA分析を行った。この標本は、形態的には、ニホンオオカミの上顎先端と思われたが、mtDNA分析では、イヌの配列を示した。本標本が、イヌなのか?イヌとニホンオオカミの交雑種なのか?については、核ゲノム解析が必要であろう。これ以外にも、DNA分析を依頼されている標本もあり、今後、解析数を増やして、ニホンオオカミの系統進化を明らかにしたいと考えている。また、これまでmtDNAを解析した標本について核ゲノム解析を行っているが、解析も順調に進みニホンオオカミの遺伝的な特徴も明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行の隙間をぬって、標本が保管されている博物館等を訪問し、骨標本のDNA分析を行ってきた。残念ながら、令和3年度は、十分に標本を見分しDNA分析用の骨粉を採取する機会には恵まれなかった。そのため、十分な分析数には至っていない。令和3年度は、近場の中部圏の骨標本について、解析を行うことができた。全国的にみて解析できる標本数はかぎられているが、特に九州や関東の標本の解析ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度と3年度と新型コロナウイルス感染症の拡大により、移動が制限されると共に、博物館や埋蔵文化財研究所では、外部者の入室が制限されたことにより、標本からの骨粉の採取が困難であった。令和4年度は、ワクチン接種も進み、解析の機会は増加するものと期待される。本研究で解析したい資料のリストや分析したい骨標本などについては、整理がすすんでいることから、令和4年度は精力的に分析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の全国的な流行拡大により、各地の標本の観察や標本からの骨粉の採取ができなかったことから、物品費や旅費に余りが生じた。特に、九州や関東地方など遠隔地への調査や出張ができなかったことから、旅費等に残額が生じた。令和4年度は、新型コロナウイルス感染者数も落ちつき全国的な移動が可能となることが予想されるので、令和4年度は、調査を控えていた処の標本が分析できるのではないかと期待している。
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