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2020 年度 実施状況報告書

陶磁器の装飾技法の解明-糊が果たす役割-

研究課題

研究課題/領域番号 20K01112
研究機関地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター

研究代表者

樋口 智寛  地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部環境技術グループ, 主任研究員 (50463063)

研究分担者 新免 歳靖  東京学芸大学, 教育学部, 講師 (40759156)
樋口 和美 (水本和美)  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (80610295)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード陶磁器 / 有機物 / XAFS / XRD
研究実績の概要

上絵付時の焼成に伴う糊と上絵具との化学反応を解明するため、上絵層のモデル試料を作製し、種々の分析を試みた。
XRD分析を行った結果、膠を混合した焼成品において、金属鉛の回折ピークが鋭く明確に検出された一方、ふのりを混合した焼成品においては検出されず、ガラス等の非晶由来のブロードなパターンが得られた。その結果、用いた糊種によって、焼成後の上絵内に金属鉛が生成する等、上絵内の絵具成分に差異が発現することが明らかとなった。
XRD分析の結果を踏まえ、焼成に伴う上絵具と糊との化学反応をより詳細に明らかにすることを目的とし、XAFS測定を試みた。1年目として、上絵具に含まれる鉛の変化に注目し、XANES領域の測定を行った(SAGA-LS BL11利用)。焼成前の上絵具と比較し、糊を混合して焼成した試料において、吸収端の低エネルギー側へのシフトが確認された。鉛化合物が、焼成により価数変化を伴う化学反応を生じたとみられる。生成物を推定するため、各種の鉛化合物のスペクトルと比較したものの、良好に一致する物質が見られず、同定まで至らなかった。化学変化の解明には、より多くの化合物のスペクトルとの比較が必要である。
絵付けに用いた糊が、焼成後の上絵具成分に差異を与えることが明らかとなり、さらに糊によっては上絵内に灰色な金属鉛が生成することも判明した。これらの現象は、上絵の発色にも関連するものであり、糊の使い分けにつながる要因の一つとなっていると推定される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

放射光を利用したXAFS測定において、EXAFS領域までの測定を予定していた。出張自粛等による放射光施設の利用延期が重なり、Pbを対象としたXANES領域の試測定にとどまった。そのため、他元素を対象とした測定や、詳細な構造の分析に着手できず、次年度以降の課題となった。試測定を実施したとこにより、測定用の試料作製方法等については、十分な知見が得られた。

今後の研究の推進方策

1.種々の絵具や糊との組み合わせによる上絵層の形態や色彩、熱化学的知見等を蓄積する
2.XAFSによる上絵層の解析、結合等の構造に関する情報を取得する
3.1および2と一連の本研究による既往の知見を加味し、考古学的知見との整合性を検証することにより、焼成条件の推定や糊が発現する効果を解明へつなげる
有機物である糊という視点も加えた陶磁器の装飾技法の発展経緯の明確化、その経緯に則した材料の選定、伝統技術の伝承のための提案を試みる

次年度使用額が生じた理由

放射光施設の利用を3回程度予定していたものの、出張自粛等の影響により1回(1日)のみとなった。そのため、実験消耗品、旅費、施設使用料等の繰越が発生した。
研究計画の変更はなく、本年度未実施分の実験も次年度以降に実施するため、その費用として、繰越分も含めて使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 陶磁器製作に使われる糊の効果 -焼成過程における上絵具の成分変化-2021

    • 著者名/発表者名
      樋口智寛、新免歳靖、水本和美、二宮修治
    • 学会等名
      日本文化財科学会第38回大会
  • [学会発表] 陶磁器製作に使われる糊の効果2020

    • 著者名/発表者名
      樋口智寛、水本和美、新免歳靖、二宮修治
    • 学会等名
      日本文化財科学会第37回大会

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公開日: 2021-12-27  

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