研究課題/領域番号 |
20K01113
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存科学室, 室長 (60372182)
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研究分担者 |
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 部長 (40280531)
降矢 哲男 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部調査・国際連携室, 主任研究員 (10747330)
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (60321626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 野々村仁清 / 窯跡出土陶片 / 胎土分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、野々村仁清の御室窯跡出土陶片の材料学的な調査を新たに実施することにより、これまで形態学上の特徴から考察されてきた技法書に記載される項目と材料の配合等の処方について、窯跡出土陶片の化学的な特徴との対応関係を明らかにすることである。 令和2年度研究実施計画では、ⅰ)分析資料選別および時代的背景の考察として、京都国立博物館所蔵の御室窯跡出土陶片について、表採資料であることの偏りや後世の混入を十分に考慮しつつ陶片を選別し、形態学的分類や製作技術の特徴などを調査し、また京焼と関連のある各地窯場資料については資料を実見し、比較検討資料の選別・調査をおこなう、ⅱ)原材料および文献史料に関する調査として、選別した陶片に対して、胎土・釉薬・彩色材料の化学組成などを実施し、データの蓄積、技法書記載の配合比等の検討を予定していた。 令和2年度の実施状況は、京都国立博物館所蔵の御室窯跡出土陶片について、約600点分の資料写真、形態学的分類、製作技法の特徴について、新たにデータベース化することができた。さらに蛍光X線を用いた胎土の非破壊分析手法について、標準試料の精度向上など科学調査の一部にも着手することができた。これらの結果は、技法書との材料比較を可能にする有用な情報となるため、今後も継続してデータの蓄積を図っていく。いっぽう、京焼と関連する各地窯場の調査、館外の仁清資料調査、打ち合わせ等は、新型コロナウイルスの影響により、予定していた調査地への出張自粛、打ち合わせの延期が生じ、十分に実施ができなかったといわざるを得ない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度から開始を予定していた分析資料選別、御室窯跡出土陶片のデータベース化は順調に進んでいるといえる。原材料および文献史料との比較に関する調査の一つである、胎土・釉薬・彩色材料の化学組成などの実施も順調に進んでいる。しかし、京焼に影響を与えた各地窯跡調査、技法書や文献資料等の調査などは、新型コロナウイルスの影響により、予定していた出張を自粛したため、十分に実施できていない状況である。このため、本年度の実施状況は予定よりもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にある御室窯跡出土陶片のデータベース化は継続実施し、胎土・釉薬・彩色材料の化学組成等に関する科学調査も予定通り調査を実施していく。令和2年度に予定していた、各地窯場資料の実見調査は、令和3年度の調査実施予定へ一部組み込む予定であるが、新型コロナウイルスの影響により出張等の自粛が求められる場合があるため、令和3年秋以降への変更・延期や、オンライン等の活用も模索するなど、状況を考慮しつつ実施する予定である。また今年度、十分には実施できなかった共同研究者等との検討会・打ち合わせなども、オンラインを積極的に活用し、情報共有を図っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、新型コロナウイルスの影響に因り、資料調査のための出張、打ち合わせ、参加予定の学会などの中止、オンライン開催となるなど、当初予定していた活動が実施できない事態が生じたため、次年度使用額に繰り越すこととした。 次年度は、新型コロナウイルスの影響を見ながら、調査を開始していく予定である。しかし出張等を自粛する必要が生じた場合は、出張を要しない調査研究を優先することとし、当初の実施計画とは、順番を前後させるなどして対応していきたいと考えている。学会発表・研究分担者との打ち合わせ等は、オンライン等を活用して、研究成果の公表や取りまとめに努めていく予定であるが、これに必要な諸経費は、研究当初の時点では計上していないため、自粛した出張旅費等を変更し、次年度以降は使用計画を策定していきたいと考えている。
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