研究課題/領域番号 |
20K01119
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
後藤 忍 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70334000)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 福島第一原発事故 / 伝承施設 / 記憶の文化 / テキスト・マイニング / アンケート |
研究実績の概要 |
2020年度は,主として1)福島県内における東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故に関する伝承施設の展示内容の調査・分析,2)伝承施設の設置・運営主体へのアンケートを実施した。 1)については,公共施設と民間施設の双方について現地調査を行った。公共施設については,震災伝承ネットワーク協議会(事務局:国土交通省東北地方整備局)が登録を所掌している「震災伝承施設」のうち,来訪者が訪問しやすく理解のしやすさに配慮された第3分類の施設を対象に,展示内容の調査・分析を行った。2020年5月に開館した「いわき震災伝承未来館」と2020年9月に開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」を含めて,福島県内には第3分類の伝承施設が9つあり(2020年11月時点),このうち展示説明文を写真撮影により持ち帰ることのできる7つの施設を対象に,展示説明文をテキスト・データ化してテキスト・マイニングを行った。分析結果より,整備された地域における被害の大きさや施設の主たるテーマが反映される傾向があること,震災・原発事故の教訓に関する説明は少ないこと,などの特徴が見られた。また,民間施設については,2021年3月に開館した「原子力災害考証館」と,2021年3月に企画展を行った「原発災害情報センター」の展示内容について現地調査を行った。 2)については,9つある第3分類の伝承施設のうち,震災・原発事故後に整備された7施設を対象に,設置・運営主体へのアンケートを実施した。伝承施設の整備・運営,展示内容,教育普及活動,収集保存活動,今後の課題などに関する調査票(計22問)を作成し,7施設から回答を得た(回収率100%)。アンケート結果より,展示を作る際に参考にした資料や施設,工夫した点などに違いがあること,課題として「来館者の減少」や「記憶の風化」が多く認識されていること,などが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,2020年度に新しく開館した伝承施設を中心に,展示内容の調査・分析を実施した。調査・分析内容は,論文,学会発表,講演などで公表した。 来館者へのアンケートは,コロナ禍の影響もあって実施できなかったが,施設の管理・運営者へのアンケートを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災・原子力災害伝承館(2020年9月開館)の展示内容の分析について,2021年3月に大幅な展示の追加があったため,それらの分析を加えて,論文としてまとめ投稿する。 また,2021年度に新たに開館予定の伝承施設については,開館後に展示内容の調査・分析を行う。 当初計画していた外国(ドイツ,ウクライナ)の現地調査については,コロナ禍のため実施できない状況が続いているが,文献調査を中心に行って「記憶の文化」の枠組みの構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により,当初計画していた外国(ドイツ,ウクライナ)の現地調査について実施できない状況が続いているため。 コロナ禍の状況が改善すれば,当初の計画通り,外国の現地調査および国際学会への参加を行いたい。
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