研究課題/領域番号 |
20K01119
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
後藤 忍 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70334000)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 福島第一原発事故 / 伝承施設 / 原子力・放射線教育 / 記憶の文化 / テキスト・マイニング |
研究実績の概要 |
2022年度は,主に1)原子力・放射線教育における教訓を伝えるためのパネル展の実施と来場者アンケート,2)ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえた環境教育のあり方に関する研究会を行った。 1)原子力・放射線教育における教訓を伝えるためのパネル展の実施と来場者アンケートについては,市民団体等と協力して,「“減思力”の教訓を学ぶためのパネル展」を福島県白河市(2022年5月27~29日),東京都武蔵野市(2022年11月4~6日),福島県いわき市(2023年1月21日)の3カ所で開催した。アンケート回収数は,白河会場が20枚,武蔵野会場が31枚,いわき会場が11枚であった。主な結果は次の通りである。a)訪れた理由は「原子力・放射線教育に興味があったから」と「東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故について何か学びたいと思ったから」が多かった,b)パネル展の感想(5段階評価)は「面白かった」が最も多く70%程度で,「やや面白かった」を合わせると90%程度を占めた。c)「面白かった理由」について,「“減思力”の教訓に共感し,伝えていきたいと思ったから」が多く選択された。主な調査・分析結果は,日本環境教育学会第33回年次大会などで発表した。 2)ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえた環境教育のあり方に関する研究会については,日本環境教育学会第33回年次大会において,自主課題研究「戦争・原発と環境教育のあり方~ウクライナ情勢を踏まえて~」を企画し,開催した。放射線衛生学と国際関係論の専門家による講演を依頼するとともに,筆者は「ウクライナ国立チョルノービリ(チェルノブイリ)博物館の展示説明文における旧ソ連政府批判」のタイトルで報告を行った。戦争・原発に関する教訓の検証における教育的なアプローチについて,参加者と議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に国際学会で発表した,東日本大震災・原子力災害伝承館の展示内容の分析について,外国の研究者2名とともに共著論文を執筆中であるが,とりまとめが遅れており,投稿および掲載には至っていない。 また,2023年12月に「公害資料館連携フォーラム in 福島」が開催されることとなり,筆者もその実行委員として加わることとなった。他に,2023年3月に福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」の展示内容がリニューアルされたり,2023年7月に民間の伝承施設が福島県南相馬市に開館する予定であるなど,本研究課題で調査すべき新たな動きが見られること等を考慮して,研究期間を1年延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災・原子力災害伝承館の展示内容の分析について,外国の研究者2名とともに執筆中の共著論文または筆者単独での論文をとりまとめて,投稿する。 2021,2022年度に実施した,原子力・放射線教育における教訓を伝えるためのパネル展について,2023年度でも別の地域で市民団体等との協力のもと開催し,来場者アンケートを実施して,追加の調査・分析を行う。 2023年3月に展示がリニューアルされた,福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」の展示内容の分析や,2023年7月に開館予定である民間の伝承施設の展示内容の分析も研究に加える。 「記憶の文化」の形成構造に関する考察部分について,文献調査や外国の研究者との共同研究を中心としてとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた外国(ドイツ,ウクライナ)の現地調査について,コロナ禍に加えて,2022年2月に開始されたロシアによるウクライナへの侵攻により,極めて困難な状況が続いているため。 また,2023年3月に福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」の展示内容がリニューアルされたことや,2023年7月に民間の伝承施設が福島県南相馬市に開館する予定であること,2023年12月に「公害資料館連携フォーラム in 福島」が開催予定であることなど,本研究課題で調査すべき新たな動きが見られるため。 これらの伝承施設の展示内容に関する新たな調査・分析を行う。また,2023年11月1~5日にICMEMO(公共に対する犯罪犠牲者追悼のための記念博物館国際委員会)の国際会議がオランダで開催されるため,同会議への参加も検討する。
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