研究課題/領域番号 |
20K01126
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
堀江 典子 佛教大学, 社会学部, 准教授 (70455484)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 都市施設 / 博物館的機能 / 持続可能性 / 持続性評価 / 生活者教育 / 記憶継承 / 地域愛着 |
研究実績の概要 |
本研究は、都市施設が博物館的機能の発揮によって地域の持続性向上に貢献する道筋をつくることを目的としている。人口減少・超高齢化社会に突入した地域の存続は喫緊の課題である。地域の存続は「人」次第であるが、地域は諸活動を支えるインフラである都市施設がなければ維持できない。都市施設はインフラとしての本来の機能に加えて様々な存在意義を有しており、「人」に働きかけることによって地域の持続性向上に貢献できる。 都市施設の博物館的機能には、第一に、生活者教育としての意義、第二に、地域の記憶を継承し先人の知恵や歴史からの教訓を伝えながら地域に愛着を持つ担い手の裾野を広げていく意義、第三に市民と施設管理者のコミュニケーションによる信頼関係構築の意義がある。 2020年度においては、地域の持続可能性のために都市施設がもつ教育的役割が、既存の持続性評価においてどのように評価可能かを把握するために、国内外の持続性評価の枠組みと、それぞれを構成する評価指標について調査し検討した。その結果、持続性可能であるために教育が重要であることは多くの持続性評価において言及されているものの、指標として設定されているのは殆どが学校教育に関するものであり、現状では都市施設等による教育的活動を適切に評価できるものではないことが明らかになった。そして、地域の持続可能性向上のために都市施設の博物館的機能を充実させていくためには、都市施設による諸活動を持続性評価の枠組みの中に位置づけ、指標を整備していくことが必要であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の影響により現地調査を遂行できなかった。また、当初予定していた都市施設の博物館的な取り組みの現状を把握するためのアンケート調査についても、新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のために、展示教育活動や催しを中止している施設が多く、的確な回答を期待できないと考えられたために、延期する判断をしたため、当初計画よりも遅れている。 一方で、文献調査については、当初予定していた既往研究による知見の整理の対象範囲を拡大して取り組むことができ、それによって都市施設の博物館的機能の意義と課題に関わる概念(生活者教育、記憶の継承・教訓・地域愛着、信頼関係とコミュニケーション)については、当初の想定以上に研究の展開を図ることができた。 それゆえ、全体としては「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においても、前年度から引き続き新型コロナウィルス感染症の収束が見通せないため、研究計画の再構築が必要と考えている。 当初計画において予定していた都市施設の活動状況に関するアンケート調査については、調査対象・方法について再検討し、感染症の影響下でも把握できる項目を対象として調査を実施することを検討する。加えて、現地調査については、感染状況を慎重にみながら、実施する際には十分な感染症対策を講じて可能な範囲で実施する。 一方、地域の感染症の記憶と教訓の継承も持続可能性にとって大きな課題であることがわかるなど、今回の新型コロナウィルス感染症を契機として本研究課題に反映すべきテーマや社会変容があることも明らかになったと考える。そのため、新たな視点を加えて研究の充実を図ることができるよう、更なる文献調査に取り組むとともに、関連する現地調査についても検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、当初予定していた現地調査に伴う旅費、学会参加のための旅費、及びアンケート調査準備のための経費等に関する支出がなかった。 2021年度の使用計画においても旅費の支出については引き続き新型コロナウィルス感染症の状況により不透明ではあるが、感染症対策を講じつつ可能な限り執行していきたい。また、アンケート調査(調査対象・方法を再検討中)等の準備・実施にかかる経費を支出する。さらに、研究成果を英語論文として発表する予定であることから、その際に必要な経費に充当する。
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