研究課題/領域番号 |
20K01129
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
太田 心平 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 准教授 (40469622)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 組織行動 / 組織文化 / 博物館 / 働きがい |
研究実績の概要 |
収集や研究、展示や教育といった博物館の活動の質を左右するのは、研究職員の学術的能力だけでない。その他の職員も含む個々の職員の有機的連携と創意工夫が、博物館の活動には直接的、間接的にあらわれる。本研究では、日米韓の博物館をサンプルに、職員の個々の労働を支える労働意欲や働きがいを質的研究と量的研究の両面から明らかにすることで、博物館という労働現場の組織行動モデルを明らかにし、その質的向上に寄与する。 研究期間の約1ヶ月から新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延がはじまったため、本研究は当初の予定から大きな変更を必要としている。1年目におこなう予定であった質的調査は、この要因による移動規制のため、おこなうことが出来なかった。また、量的調査についても、世界の博物館が在宅勤務および休館をくり返していることなどの理由により、実施が不可能であった。 他方で、海外の研究協力者たちとオンラインで連携することにより、2年目以降にこれらをより効果的におこなえる準備が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、米国および韓国での現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなう移動規制により、これらをおこなうことが出来なかった。オンラインでの面談や電話等による現地調査に切り替えることも一考したが、以下の理由によりむしろそれらはおこなうべきでないと判断した。1)オンラインでの面談や電話等による現地調査は、特に1年目の段階では、本研究が重要視する深層的な民族誌調査の代わりになりえない。2)オンラインでの面談や電話等で現地調査をおこなった場合には、2年目以降におこなう深層的な民族誌調査に悪影響が出る危険性が高い。3)本研究の調査対象が博物館職員の職場活動である以上、在宅勤務や博物館休館が世界的に一般的な特殊な状況下にオンラインでの面談や電話等による現地調査をおこなっても、えられる成果は一般性に欠くものにならざるをえない。4)本研究に協力してくれる予定であった博物館やその職員たちが、新型コロナウイルス感染症の蔓延についての対策に多忙であり、協力を要請していいものと判断しがたい。 他方、かねてより本研究への協力を約束してくれていた海外の研究者たちと緊密に連絡を取ることによって、本研究の推進はみられた。1)民族誌調査の重点調査項目を、より具体的に洗い出すことが出来た。2)質問紙調査で用いる既存の様式を、本研究により適した内容にカスタマイズすることが出来た。3)これらをおこなっておくことが逆にマイナスの結果をもたらさないか、理論的に検討できた。4)本研究で参照できる先行研究を、より広く事前吟味しておくことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目も新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなって、移動規制による現地調査の困難や、調査対象である博物館の緊急事態は続くものと判断される。ただし、2年目の第4四半期以降は、これらが改善されるものと見通すことも出来るため、2年目の終わりからまずは質問紙による量的調査をはじめる計画である。3年目に質的調査をはじめた場合、その本調査と補足調査、分析と解釈には4年目までかからざるをえないものと危惧されるため、本研究は予定どおりの4年間で終了できないことも想定しなければならない。1年間の延長を覚悟しつつも、2年目後半から進捗を加速できるよう、他の用務を調整しておくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、移動規制がかせられたため現地調査がおこなえず、旅費を使用することが出来なかった。また、同じ背景で研究対象である博物館が在宅勤務かつ休館という状況をくり返したため、勤務実態に関する質問紙調査をおこなうことも出来ず、その他の経費を使用することも出来なかった。 これらの次年度使用額は、本年度におこなえなかった調査を次年度におこなうことで、使用する計画である。
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