研究課題/領域番号 |
20K01138
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
松岡 憲知 茨城大学, 教育学部, 特任教授 (10209512)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地形 / 周氷河 / 構造土 / 気候指標 / 凍結融解 / 国際ネットワーク |
研究実績の概要 |
代表的な周氷河地形であり,世界の寒冷地域に遍在する構造土を霜柱型,浅層凍結型,対流型,熱収縮破壊型に分類し,分布・形態・構造・プロセスに関する現地調査・観測および室内実験に基づいて,構造土の形態と温度条件の関係を解明し,気候指標としての基準を確立することを目的とした。 3年目の目標とした「世界各地での現地調査・観測を再開し,構造土の分布・形態・気候条件・形成プロセスに関わるデータ取得を積極的に推進する」については,スイス(中緯度高山)での短期間調査を実施し分布と形態についてのデータを蓄積したが,スバルバール(高緯度低地)や他地域はコロナ禍の影響により訪問できず,観測データの回収や新規データ取得もできなかった。一方,日本の南アルプス(中緯度高山)では,UAVを使用した詳細マップ作成と構造土上の礫移動の観測が順調に進展した。礫移動の解析により,礫径と移動速度の関係や気候変動の移動速度への影響を解明し,解析結果をとりまとめて,日本地理学会で発表するとともに,国際誌に投稿した。また,2023年6月にスペインでの国際永久凍土学会でも発表を予定している。しかし,海外調査の大幅な遅れのために,気候条件と構造土の形態の関係の定量化,そして本計画の最終目標である「気候指標のマニュアル」の完成は,研究期間を延長して推進する予定である。 当初計画の一つである「構造土研究の国際ネットワーク化」については,J. Obu博士(オスロ大)らとともにオンラインで議論を進め,Cryokarstプロジェクトのキックオフ集会をオンラインで開催した。 以上のように,本計画の中核である野外でのデータ取得については一部地域で進展があり成果の公表も進み,国際的ネットワークの構築にも進展があったが,地球規模での構造土の気候指標化については,次年度以降の完成をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では,世界各地の山地での現地調査および観測により,構造土の分布・規模・形態・形成プロセスと気候条件の関わりについて体系化することをめざしているが,コロナ禍のため調査対象地域への海外渡航が一部地域に限定され,デ-タの取得は日本とスイスの山地に限定された。そのため,多様な構造土の分類や気候条件との関係については分析を十分に進めることができなかった。 一方で,日本アルプスでは長期的な観測データの取得により,構造土の礫の淘汰プロセスや気候条件との関わりが詳細に判明し,研究成果の学会発表や論文投稿を進めることができた。 新たな展開として,J. Obu博士(オスロ大)らと構造土研究の国際ネットワーク化が進み,次年度以降は欧州各地の寒冷環境での国際共同調査や国際共同論文執筆を進める基礎がつくられた。これから数年間の研究進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は海外渡航が可能になり,国際学会も現地で開催されるようになることが期待されるので,スバルバールやスイスでの現地調査・観測を再開し,世界各地での構造土の分布・形態・気候条件・形成プロセスに関わるデータ取得を積極的に推進する。野外での観測データを2年分取得できなかったため,さらに1年の研究期間延長も視野に入れて,計画を再編成する予定である。 現地の研究者ともオンラインで継続的に連絡をとり,共同研究に関わる打ち合わせを進める。2023年度はスペインでの学会で研究発表を行うとともに,Tanarro Garcia教授(マドリード・コンプルテンセ大)とともにスペイン・シエラネバダ山脈の構造土調査を実施する。 Cryokarst計画のメンバーにも構造土の分布・形態・構造・プロセスに関する情報提供を依頼し,世界各地からのデータ取得を進める。海外からの来日も可能になってきたので,室内実験とモデル化についても李安原博士(中国・紹興文理学院)ら海外研究協力者との連携をさらに深めて,先端的研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き,コロナ禍により海外渡航が限定されたため,予定していたノルウェー北極圏ほかでの現地調査が中止となった。また,参加を予定していた国際学会も一年延期され,旅費の執行が滞ったため,多額の未使用額が生じた。その一部を技術革新が急速に進んだ地形可視化システムを充実させるための物品費に充当するとともに,残額を次年度以降に繰り越した。繰越金は次年度以降の主に海外調査および成果発表旅費として使用する予定である。実質的に2年間の研究の遅れがあるため,研究期間をさらに1年延長して海外調査等に使用する可能性も視野に入れている。
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