研究課題/領域番号 |
20K01139
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 敦 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60431657)
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研究分担者 |
佐々木 夏来 中央大学, 理工学部, 助教 (40823381)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 偽高山帯 / 積雪分布 / 山地湿原 / オオシラビソ |
研究実績の概要 |
本州の多雪山地には,オオシラビソが優占する亜高山帯針葉樹林をもつ山と,針葉樹林帯を欠く(偽高山帯が広がる)山がある。それに関してすでに多くの研究があるが,本研究では近年利用可能になった空間情報データを用いることなどで,あらためて偽高山帯形成に寄与する諸要因の階層性や相互関係を議論することを目的としている。 環境省が公表している1/2.5万植生図と,国土地理院が公表しているDEMをGISソフトウェア上で重ねて解析した。既存の植生図をもとに現在の亜高山帯針葉樹林を構成するオオシラビソ群集とシラビソ-オオシラビソ群集,そしてそれ以外の植生が占有する場に区分し,それぞれの気候・地形条件を比較検討した。シラビソ-オオシラビソ群集は相対的に雪が少ない山域に優占するのに対し,オオシラビソ群集や偽高山帯の分布パターンは,積雪深によって分けられるものではなかった。一方,オオシラビソ群集が優占する山域は,山域全体で傾斜が非常に緩やかという地形条件をもっていた。 主に地温観測によって明らかにした積雪期間を比べると,ひとつの山域においては,一般的に言われるように積雪の多寡に応じた植生分布が認められた。しかし,山域間で比較すると,積雪期間が同様のところでも植生がまったく異なっており,このことは現在の環境要因だけでなく,植生が変遷していく過程での,分布適地の差異を考慮すべきという地史・植生史からの見解を支持するようであった。こうした地史を考察するために,本研究では現地調査のもう1つの柱として,苗場山の湿原土壌を対象にしている。湿地土壌の基底部から得られた放射性炭素年代からは,現在と同様の冷温湿潤環境になったのは完新世中頃であり,その時代に向けて,植生とくにオオシラビソ林がどう発達しえたかが植生史の鍵になりそうであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に新型コロナウィルスの拡がりを受けて,研究計画の実施が大きく制約された(過年度の実施状況報告書に記載済み)。その後,2年間近い育児休業による研究中断を挟んで,令和5年度より研究を再開しているが,育児による時間的制約が大きく,遅れを取り戻すことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
育児による時間的制約が大きい状況を踏まえ,当初予定していた現地における積雪深の空間分布調査は縮小して,室内での空間情報データの解析を中心に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度にコロナ禍によって野外調査を行うことができなかったため未使用額が生じていた。令和6年度には,前述のとおり室内作業の比重を増やす予定であり,そのための画像データ(空中写真など)の取得にあてる。
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