研究期間最終年度である2023年度は,水害常襲地域である群馬県南東部において過去に発生した水害に関する災害碑(水害碑),伝統的水防建築である水塚の分布,盛土高さなどに関する現地踏査とそれらのデータの取りまとめを行った。群馬県南東部は繰り返し洪水被害を受けている地域であり,江戸期以降に建立された水害碑が多く分布する。群馬県南東部の板倉町や明和町,館林市などでは,それら水害碑の近傍地区に水塚が存在していることが確認された。河川合流地点の近傍地域には水塚が多く見られ,河川合流地点から上流に向かって盛土の高さが次第に低下し,分布も疎らになっていく傾向が確認された。 2024年能登半島地震発生以降は,液状化の発生が認められた石川県中部,富山県,新潟県新潟市などにおいて現地踏査を実施し,液状化発生域を地図化した「液状化地図」を作成し,液状化発生域を詳細かつ広域的に明らかにした。新潟市西区と江南区の信濃川近傍地区では,江戸期から明治期まで信濃川河道であった区域において液状化が発生し,家屋の不同沈下が多数発生した。高岡市伏木地区では,江戸末期に湿地を埋め立てて造成したとみられる地域において液状化被害が集中的に発生した。富山県氷見市では,海岸線と並行して分布する浜堤や旧河道と思われる地区において液状化が発生し,石川県金沢市から羽咋市にかけての砂丘内陸側の基部では,液状化(流動化)による甚大な被害が見られた。 本研究全体を通して,浸水域の地形条件やハザードマップの浸水想定の妥当性,洪水発生地区の治水対策と洪水発生地点との関係などについて,特に2019年台風19号(東日本台風)襲来時における荒川水系都幾川流域を事例として検討することができた。また,液状化発生域の地形条件や土地履歴,ハザードマップにおける液状化想定と被害実態との関係について,2024年能登半島地震を事例として,検証することができた。
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