研究課題/領域番号 |
20K01147
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60360468)
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研究分担者 |
藤原 智 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 技官 (40783345)
金子 誠 公益財団法人深田地質研究所, その他部局等, 主査研究員 (50823639)
中埜 貴元 国土地理院(地理地殻活動研究センター), その他部局等, 研究官 (60511962)
石丸 聡 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主幹 (50446366)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地震 / 地すべり / 胆振東部地震 / 岩盤 / 断層 / 活褶曲 / SAR / 航空レーザ測量 |
研究実績の概要 |
先行研究は,2018年北海道胆振東部地震の被災域において岩盤地すべりの分布図を明らかにした。この分布図では,本地震による変動・無変動が分類されている。本分布図から岩盤地すべりのポリゴンデータを生成した。地震時SAR干渉画像によれば,本分布図は本地震の隆起域より北西側に当たるので,地殻変動による変位と断層との関係は必ずしも明らかになっていないが,地質図に記載の断層からの距離に応じた岩盤地すべりの頻度をGIS解析した。その結果,本地震で変動した岩盤地すべりは,断層の直近(距離600~800 m)で多発する場合や2 km以上離れた場所で多発する場合がみられた。ただし,地震後の2018年に計測された航空レーザ測量データと地震前の2006年に計測された航空レーザ測量データのグラウンドデータを上空視界の開けた路面上で比較しても,地質図に記載の断層を境に地殻変動に起因する不連続な地表変位は確認されず,断層運動に伴う地殻変動と岩盤地すべりの関係を明瞭に関連づけることは難しかった。次に,対象地域のような活褶曲地帯では,背斜軸や向斜軸と地形が密接に関連すると考えられるため,起伏量を変動・無変動の岩盤地すべりの分布と重ね合わせてGIS解析したところ,2018年地震による中部~上部中新統の岩盤地すべりの発生率は,起伏量の値が大きくなるほど増加することがわかった。今後,起伏量と,2018年地震による地殻変動の量がどのように関わり,活褶曲の運動が岩盤地すべりの分布や発生にどのように関わるのか,より詳しく調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年北海道胆振東部地震による岩盤地すべりの多発地帯では,水準路線が通過していないことから,本地震による地殻変動を地震前後の水準測量の比較で把握できないことが分った。しかし,地震前後の航空レーザ測量データの比較により,それが可能となり,地殻変動のグランドトゥルースを採る作業が効率的に進んだためである。また,これまで2年間の岩盤地すべりの現地調査の結果をグランドトゥルースとして,地震後の航空レーザ測量データから生成した陰影起伏図を再判読し,本地震による岩盤地すべりの変動・無変動の空間分布をより詳しく明らかにできた。地質図に記載されていない断層を地震後の航空レーザ測量データから生成した陰影起伏図で判読する試みにも着手していることから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
地震後の航空レーザ測量データから生成した陰影起伏図を再判読することによって,先行研究の分類精度(変動か,無変動か)をさらに高めた岩盤地すべりの分布図データを作成する。また,地震後の航空レーザ測量データから生成した陰影起伏図を判読することによって断層データを生成する。これらのデータを重ね合わせたGIS解析と,SAR干渉画像では明らかになっていない岩盤地すべりの多発地帯における地殻変動を,SARデータの別途の解析方法でさらに明らかにして,その地殻変動量と岩盤地すべりの変動・無変動の関係を明らかにする。地すべりの地形発達を地殻変動と絡めた議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍もあり県境をまたいだ移動を自粛していたことから現地調査の日数と回数を必要最小限としたが,翌年度分として請求した助成金と合わせて現地調査の日数と回数を増やして岩盤地すべり分布図の高精度化のためのグランドトゥルースを収集するほか,地形変化を3次元で把握するための立体視可能な衛星画像を広域に購入して研究の進捗を加速化するなど有効に活用する。
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