• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

福島県沿岸域の水質・広域地下水流動系の現況把握と復興事業等に伴う影響予測

研究課題

研究課題/領域番号 20K01150
研究機関総合地球環境学研究所

研究代表者

藪崎 志穂  総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 研究員 (60447232)

研究分担者 川越 清樹  福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (30548467)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード福島県沿岸域 / 水質 / 酸素・水素安定同位体比 / 湧水 / 涵養域 / 滞留時間 / 地下水流動 / ストロンチウム安定同位体比
研究実績の概要

・2021年8月~9月および2022年3月に福島県沿岸部において定期観測地点ならびに新規地点の現地調査,採水を実施した。採水した試料は無機溶存成分(IC),微量元素(ICP-MS),酸素・水素安定同位体比(CRDS法)を測定し,これらの結果を元に,水質および安定同位体比の空間分布を把握した。定期観測を行っている地点については,水質の経年変化について取りまとめた。また,調査地点のうち一部地点では,震災後の2012年から行っている観測により得られた水質データを蓄積しているため,これまでに沿岸域で行われている復興事業(堤防建設,盛土など)や土地利用変化(農地からソーラーパネルなどへの転用や,農耕の再開など)に伴う地下水や湧水の水質変化や地下水流動への影響について検討を始めている。
・2020年度の調査において,沿岸域の水質や同位体比の特徴を把握し,統計解析を用いてそれらを区分し,また安定同位体比による涵養域の推定も試みた。これらの結果を踏まえて,2021年度は3H(トリチウム)やCFCs(フロン類),SF6(六フッ化硫黄)の測定結果を利用して地下水や湧水の滞留時間について推定した。その結果,内陸部の阿武隈高地で涵養された地下水等では60~80年程度,沿岸域近くで涵養された地下水等は数年~20年程度の滞留時間であることを把握した。これらの結果は論文としてまとめ,学術誌に投稿中である。
・地下水流動の把握のためにこれまで採取した水試料のストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)を分析し,内陸部の阿武隈高地(花崗岩類が分布)で涵養された地点,沿岸付近の台地(堆積岩類が分布)で涵養された地点,海水の影響を受けている地点などを区分することができた。この結果は,溶存成分や水同位体によって求められた特徴と概ね整合しており,より信頼性の高い結果を示すことができた。2022年度も引き続きストロンチウム分析を実施してゆく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

COVID-19の影響により出張等の制限があったため,当初予定していた現地調査の回数を減らして実施した。そのため,採水試料や水質データの取得が計画よりも少ない状況であるが,2021年度の解析に最低限必要なデータは取得できているため,学会での発表ならびに論文作成は概ね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

研究対象地域である福島県沿岸域周辺では沿岸域の整備が行われており(堤防の整備,砂防林や緑地公園の整備,圃場整備など),沿岸域の地下水や湧水の水質や地下水流動は,震災前,震災直後,その後の時間経過に伴い変化している可能性が高い。また,震災時の津波浸水の影響により耕作を中断していた沿岸付近の農地において,2020年ごろから耕作が再開された地域が増えてきている。畑地に散布される肥料や,水田として利用されている場所では田面水の地下への浸透など,沿岸域の特に浅層の地下水や湧水の水質および地下水流動に与える影響は大きいと考えられる。この点において,特に継続した観測を行っている地点は長期間の水質変化を把握するうえで重要であるため,2022年度も現地で調査を引き続きおこない,水質データの蓄積に努める。また,調査と並行してこれまでの調査の結果を取りまとめ,データの公表や論文化を進めてゆく予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の移動制限の影響により,2021年度前半に予定していた出張が延期となったため,当初計上していた旅費や調査に係る消耗品,分析機器利用費などの予算の一部を次年度に繰り越すこととなった。
2022年度は延期となった調査の実施,採取試料の水質分析を行う。また,成果公表のための学会発表,論文化費用(英文校閲,投稿費)として使用する予定である。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 「見えない」地下水の流れを「見える」ようにするには?-安定同位体や CFCs,SF6を用いた地下水の涵養域および滞留時間の推定法-2021

    • 著者名/発表者名
      藪崎 志穂
    • 雑誌名

      地球科学

      巻: 75 ページ: 91-96

    • DOI

      10.15080/agcjchikyukagaku.75.1_91

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 阿賀野川流域を対象とした化学成分に基づく積雪特徴の同定2021

    • 著者名/発表者名
      川越清樹・六角日七・藪崎志穂
    • 雑誌名

      地球環境シンポジウム講演集

      巻: 29 ページ: 145-149

  • [雑誌論文] 化学組成に基づく流域内の物質流出特性の解析2021

    • 著者名/発表者名
      幡谷有翼・川越清樹・藪崎志穂
    • 雑誌名

      地球環境シンポジウム講演集

      巻: 29 ページ: 131-134

  • [学会発表] 阿武隈川と雄物川の地域固有性の解明のための流域比較検討2022

    • 著者名/発表者名
      幡谷有翼・藪崎志穂・川越清樹
    • 学会等名
      令和3年度 土木学会東北支部技術研究発表会
  • [学会発表] 気象水文・化学組成のデータ融合化 による阿賀野川流域の積雪特徴の同定2022

    • 著者名/発表者名
      六角日七・藪崎志穂・川越清樹
    • 学会等名
      令和3年度 土木学会東北支部技術研究 発表会
  • [学会発表] 裏磐梯地域と福島市内における降水の安定同位体比の特徴と気象条件との関係について2021

    • 著者名/発表者名
      藪崎志穂・川越清樹・佐藤 公
    • 学会等名
      磐梯朝日自然環境保全研究所 令和2年度研究成果報告会(オンライン開催)
  • [学会発表] 土地利用に応じた阿武隈川の物質流出機構の地域特性解析2021

    • 著者名/発表者名
      幡谷有翼・藪崎志穂・川越清樹
    • 学会等名
      令和2年度 土木学会東北支部技術研究発表会
  • [学会発表] 物質流出成分に寄与する地域条件の因果関係の検討2021

    • 著者名/発表者名
      古川綾華・藪崎志穂・川越清樹
    • 学会等名
      令和2年度 土木学会東北支部技術研究発表会
  • [学会発表] 福島県北部沿岸域から阿武隈高地周辺の地下水,湧水等の微量成分の濃度分布2021

    • 著者名/発表者名
      藪崎志穂
    • 学会等名
      地球惑星科学連合2021年合同大会(HTT16-04)
  • [学会発表] 化学成分と気象水文のデータを用いた流域圏の積雪特徴の同定2021

    • 著者名/発表者名
      川越清樹・藪崎志穂
    • 学会等名
      地球惑星科学連合2021年合同大会(HTT16-03)
  • [学会発表] 元素成分をトレーサーとした流域の地域性特徴の同定2021

    • 著者名/発表者名
      幡谷有翼・藪崎志穂・川越清樹
    • 学会等名
      (地球惑星科学連合2021年合同大会(HTT16-P02)
  • [学会発表] 阿賀野川流域を対象とした化学成分 に基づく積雪特徴の同定2021

    • 著者名/発表者名
      川越清樹・藪崎志穂・六角日七
    • 学会等名
      第29回土木学会地球環境シンポジウム(オンライン開催)
  • [学会発表] 化学組成に基づく流域内の物質流出特性の解析2021

    • 著者名/発表者名
      幡谷有翼・川越清樹・藪崎志穂
    • 学会等名
      第29回土木学会地球環境シンポジウム(オンライン開催)
  • [学会発表] 福島県沿岸域から阿武隈高地における地下水,河川水のストロンチウム安定同位体比の特徴2021

    • 著者名/発表者名
      藪崎志穂・申 基澈
    • 学会等名
      第11回同位体環境学シンポジウム
  • [学会発表] 流域の化学流出成分をトレーサーとした地域特性の同定2021

    • 著者名/発表者名
      幡谷有翼・藪崎志穂・川越清樹
    • 学会等名
      第11回同位体環境学シンポジウム
  • [学会発表] 化学成分を利用した阿武隈高地の風化帯分布域の検討2021

    • 著者名/発表者名
      川越清樹・藪崎志穂・佐藤綺香
    • 学会等名
      第11回同位体環境学シンポジウム
  • [図書] 地下水流動研究におけるマルチトレーサーの活用法.61-68.(陀安一郎・申 基澈・鷹野真也 編「同位体環境学がえがく世界:2022年版」)2022

    • 著者名/発表者名
      藪崎志穂
    • 総ページ数
      248
    • 出版者
      総合地球環境学研究所
    • ISBN
      978-4-906888-91-7
  • [図書] 沿岸域の地下水の水質と安定同位体比から見えてくる水質形成の仕組み-仙台市宮城野区の調査事例の紹介-.135-139.(陀安一郎・申 基澈・鷹野真也 編「同位体環境学がえがく世界:2022年版」)2022

    • 著者名/発表者名
      藪崎志穂
    • 総ページ数
      248
    • 出版者
      総合地球環境学研究所
    • ISBN
      978-4-906888-91-7

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi