研究課題/領域番号 |
20K01150
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
藪崎 志穂 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 上級研究員 (60447232)
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研究分担者 |
川越 清樹 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (30548467)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 福島県沿岸域 / 地下水流動 / 水質 / 安定同位体 / 涵養域 / 滞留時間 / ストロンチウム安定同位体比 / 浪江町 |
研究実績の概要 |
・福島県沿岸域(新地町,相馬市,南相馬市)の地下水調査を2023年度も継続して実施し,水質データを蓄積した。地下水や湧水の滞留時間の分析結果を英語論文としてまとめ,学会誌に掲載された。 ・復興事業に伴い,住民の帰還や農業・工業活動の再開が進みつつある浪江町では,水道水源が地下水(浅井戸)であり,また農業用水としても地下水が利用されているため,今後地下水利用が増えることが予想される。そのため,地下水の水質や流動にも影響が及ぶ可能性があるため,現在の地下水データを記録しておくことは,今後の地下水利用を行うためにも重要であると思われる。2023年度は,浪江町の既存井戸の調査を行った。沿岸域の津波による被害を受けた場所に井戸(不圧地下水)が残っており,管理者の許可を得て,3か月間の水位・水質の連続観測を行った。連続観測終了後は,定期的に採水と地下水位測定を実施した。その結果,沿岸域の井戸では溶存成分量は比較的多いが海水侵入の影響は認められず,水位も概ね一定した値を示すことを把握した。内陸では複数の井戸(不圧地下水)で調査を行い,これらの地下水は沿岸域の地下水と比べて溶存成分量が低く,一部の地下水では硝酸イオン濃度もやや多く含まれているため,周辺の農業活動の影響を受けていることが予想された。また,(不圧)地下水流動は内陸から沿岸に向けて流動することも把握した。これらの事前調査の結果をもとにして,2024年度は地下水の連続観測を行うための観測井の設置場所を検討し,井戸設置に向けた準備を進める予定である。 ・2024年3月29日に仙台市内(東北大学片平キャンパス)で開催された津波被災地プロジェクト2023年度報告会「震災被災地の自然・暮らしと復興」の共催を務め,同報告会内で本科研費の研究成果の一部を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
浪江町に設置を予定している観測井の設置場所の検討および担当者との打ち合わせに時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度は,浪江町の調査を重点的に行う。復興事業に伴い,沿岸域では土地利用が大きく変化しているため,将来的に水質や地下水位にも変化が生じる可能性が考えられる。また,内陸部では2011年の原発事故の影響により,10年以上の間,地下水環境には農業活動を主とする人間活動の影響が及んでいなかったが,最近は一部地域で農業活動等が再開し,地下水(特に不圧地下水)に影響が及ぶ可能性がある。こうした地下水環境の変化をデータとして蓄積することを目標として,地下水の調査を行う。併せて,継続的な調査を実施するための観測井設置に向けた準備を進め,今後の研究の発展につながるように努めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
・浪江町での観測井設置に向けた事前調査や研究打ち合わせを行うための旅費や,採取した試料の分析に係る経費として,2024年度に繰り越した。 ・研究成果をまとめるための論文の投稿料などを,2024年度に繰り越した。
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