研究課題/領域番号 |
20K01151
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宍倉 正展 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (00357188)
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研究分担者 |
前杢 英明 法政大学, 文学部, 教授 (50222287)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 隆起 / 活断層 / 津波 / 海岸段丘 / 日本海東縁 |
研究実績の概要 |
完新世における地殻隆起と津波の痕跡を海岸の地形・地質から探る目的で、新潟県村上市の三面川河口付近から山形県鶴岡市の荒崎灯台周辺にかけての海岸において地形地質踏査を実施した。具体的には合計14地点で岩石海岸における離水波食棚や離水ノッチと判断される地形を観察するとともに、そこに固着した生物遺骸の有無の確認とこれらの隆起痕跡の高度測定を実施した。その結果、鶴岡市加茂付近の海岸で少なくとも4つのレベル(標高3.0-3.5 m、2.6-2.9 m、1.6 m、1.2 m)に区分される離水波食棚を確認した。また生物由来と考えられる石灰質の物質の固着が認められた。 これらの結果から1度に0.5-1.0 m程度の隆起が間欠的にくり返し生じている可能性がうかがえる。同様の現象は日本海沿岸では2007年能登半島地震で隆起した能登半島西部や1872年浜田地震で隆起した島根県浜田市の海岸などでも観察することができる。これらの地域の隆起痕跡は沿岸海域活断層の活動を反映していることから、本地域においても沿岸海域に活断層が分布し、くり返し活動している可能性を示唆する。しかし2019年山形県沖の地震では、本地域で顕著な隆起は観測されていないことから、別の断層の活動によるものか、あるいは断層活動以外の隆起運動が生じている可能性がある。 以上の成果は日本海東縁地域の中で、まだ沿岸海域活断層の明確な分布や活動性評価が明らかになっていない山形県から新潟県北部の地域において、重要な知見となりうることから、今後さらなる追求が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画時に想定できなかった新型コロナウィルスの感染拡大により、令和2年度前半は野外調査を行うことができなかった。令和2年度後半に感染症対策を行った上でなんとか調査ができたものの、調査日数不足によりデータ取得が十分に行うことができず、計画よりやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の調査で得た試料の分析を進めることと、改めて山形県から新潟県北部沿岸地域の隆起痕跡の高度分布の確認すること、そして対岸の粟島や佐渡ヶ島においても同様の調査を実施し、この地域の沿岸海域活断層の活動性評価に向けてデータを収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大による影響で、令和2年度に予定していた野外調査の日数が制限されたことにより、当該年度の旅費の使用額が予定より大幅に抑えられた。その分を次年度使用額として計上することになった。 令和3年度においては令和2年度に達せられなかった野外調査の旅費としておもに使用する予定であるが、引き続き新型コロナウィルスの感染状況が改善しない場合は、年代測定等の分析費用にも充当する予定である。
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