本研究の目的は、地質学、地理学や法科学において「この土砂は,どこから来たのか」と必ず問われる問題に対して、石英の包有物から回答することであった。 当初の計画では2022年度で研究は終える予定であったが、パンデミックにより他研究機関に出張して分析を行うことが出来なかった。そこで研究を1年延長した。延長することが出来たおかげで、2023年度に無事に終了を迎えた。研究の最終年度の2023年度は、青森沿岸の海岸堆積物の研究を国際学術雑誌で公表するために、磁気分析の結果についての論文の執筆と追加の分析を中心に実施した。また学会期間中や出張の機会を利用して論文の共著者との打ち合わせと議論を実施した。2023年12月には、ロンドンで開催された国際研究会にて、成果の一部を口頭発表することが出来た。 研究期間全体を通じて実施した研究の最大の成果としては、石英の包有物だけでなく、長石や強磁性鉱物の包有物も認められ、これらにも地域的な特徴があることを明らかにし、包有物に基づいた粒子の由来の地域の推定が可能であることを示すことが出来たことである。これらの鉱物の包有物の分析結果から、事件や事故の証拠品として採取された土砂から粒子の由来地域の推定へ応用することができるかもしれない。また、海底堆積物から過去の洪水や津波などの災害のイベントを包有物の分析から発見できる可能性がある。今後は、法科学や堆積学、海洋地質などへの幅広い応用が期待される。
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