本研究は、1990年代後半以降の再都市化段階における東京の都心空間の変容を、都市地理学的観点から総合的に明らかにするものである。しかし本年度は、統計分析により、東京都心3区(千代田区・中央区・港区)の住居地区と業務地区の関係の変化を明らかにすることができた。 国勢調査と事業所・企業統計調査、経済センサス活動調査を利用し、1995・6年から2015・6年の間で、東京都区部の人口と事業所従業者数(公務除く)の変化をみると、すべての区で人口は増加したが、事業所従業者数は区によって増減の差が大きく、人口と従業者数の増加傾向には区によって違いがあることがわかった。 次に都心3区について町丁別に分析した。人口では、この間に329町丁のうち減少を示したのは69町丁だけで、減少した場合も減少数は小さく、全体的に増加した。一方、従業者数の変化は、150町丁で増加した一方、179町丁で減少を示した。また、増加した150町丁での増加数は62.7万人だったが、そのうち上位12町丁の増加で50.3%を占め、増加は一部に偏っていた。 これらの結果、従業者数/人口比が低下した地区が増加した。1995・96年では、ほぼ業務地区といえる従業者/人口比10以上の町丁は190町丁(人口0人の町丁を含む)だったが、2015・16年には143町丁に減少した。この傾向は特に中央区日本橋地区東部で顕著である。神田地区は従業者の減少が見られるものの、人口の増加が小さく従業者数/人口比は10以上を維持している。 従業者の増加が著しい町丁には、この期間に大型ビルが建設されていた。大型ビルを含む地区に従業者が集中的に増加、それ以外では減少し、従業者/人口比が低下する町丁が増加した。分散的に大型ビルが建てられたのは、個別の地区ごとの開発主体が、さまざまな規制緩和に伴う容積率の上乗せを利用したためと考えられる。
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