研究課題/領域番号 |
20K01155
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
大西 宏治 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10324443)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 児童 / 安全 / 通学路 / 登下校 / 屋外空間 |
研究実績の概要 |
通学路の実態について、富山市内の14校について、富山市の持つLPWAとGPSセンサーを用いて把握した。いずれの学校についても登校に関する移動の軌跡は学校区内で留まるものがほとんどで、下校については多様な活動が実施されていることが推測された。このGPSセンサーはランドセルに装着したため、ランドセルを伴う児童の移動が把握される。さらに児童の自宅を特定できないように朝の起動時点から半径50mの点情報をオミットしているため、住宅街などに児童の位置情報の空白地が現れ、分析に際して注意が必要となる。 下校の空間を取り上げると、神通川と常願寺川を渡る移動は少なかった。橋は自動車交通のボトルネックになることがあり、保護者が児童を連れて習い事へ移動する際に可能な限り避けていると推測される。また、富山市の南西と北東の郊外では、活動空間がそれぞれで完結することわかった。英会話や学習塾、スイミングスクールなどの習い事の立地が充実していることが影響していると考えられる。 さらに富山駅を越えて反対側の地域で活動する事例も少ない。これも富山駅や鉄道を越えるボトルネックをためらうためかと推測される。富山駅の高架化工事が終了し、道路も橋梁化した鉄道の下を自由に渡れるようになるとその活動空間は変化すると推測される。 また、今回の調査結果について、小学校の教員や見守り活動団体に対してヒアリングをしたが、おおむね自分たちの思っている児童の登下校の状況が地図上に可視化されたとの回答をもらった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
登下校の位置情報をGPSセンサーを使って複数校で取得し、結果の整理と分析の一部を行うことができた。また、学校の立地と登下校の特性について議論可能な段階までデータの整理が進んだ。今後、GISを活用して位置情報についての分析を進めることで、さらなる研究の進展がみられるであろう。 個人情報保護のために、今回得た点データは軌跡のデータではなく、1分ごとの児童の位置情報で有り、児童固有のidなどを取得していない。そのため、今後、詳細な分析を行おうとする場合、限界が生まれるかもしれない。また、ランドセルにGPSをつけたため、児童のランドセルを伴う登下校のみ取り上げていることで、研究の限界もそこに生まれる。それらを乗り越える方法を考える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は富山市が取り組む児童の見守り安全の事業と合同で調査を実施することが可能であり、分析対象となる小学校は確保された。データ取得の手続きは前年度と同じとなり、個人情報を取得しない方向でGPSデータを得るため、それを分析する手続きについて改めて検討が必要となる。 昨年度は実地観察をほとんど実施できてこなかったため、その点を充実させることで考察に寄与する要素をいくつか付加できる可能性が増す。
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