研究課題/領域番号 |
20K01156
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森 正人 三重大学, 人文学部, 教授 (10372541)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 文化地理学 / ポスト人間中心主義 / 権力 / デジタル技術 |
研究実績の概要 |
2021年度において特筆すべき研究の成果は、『文化地理学講義』の新曜社からの出版と、11月の人文地理学会大会での発表である。それぞれについて以下に記す。 『文化地理学講義』は、古代からの地表面への想像力の歴史、20世紀に登場した文化地理学における学史、および21世紀に登場するポスト人間中心主義の理論と議論を紹介する。とくに都市空間の統治とデジタル技術の応用を考える本プロジェクトにおいて、全13章中、第4章以降の10章分は重要な論点を提示した。『文化地理学講義』は一般書として出版されており、科学研究費のプロジェクトの研究成果を広く社会に還元することができたと考える。 人文地理学会大会においては「オメラスを去る人と、地存在論と」というタイトルで、ポスト人間中心主義をさらに批判的に捉える議論と理論を紹介した。とくに、エリザベス・ポヴィネッリによる地存在権力の議論は、後期自由主義における資本主義と国家主義の権力が、先住民を生命を欠く「地」として形象化し、収奪するというもので、英語圏の人文学における最新の議論の一つである。発表はオンラインで行われ、当日は80名を超える人が参加した。このことは、本プロジェクトと本発表の学術的意義を傍証するもので、また広くその議論を学界・学会に還元するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大によって、2021年度も文献収集や聞き取りといった調査が行えなかった。その代わりに、英語圏の理論動向を把握するために、英語の書籍や論文を渉猟し、それをまとめて記述することを行った。それにより、英語圏人文学における最新の議論を日本において展開することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大が予断を許さず、企業自体も面会を自粛しているなか、各企業での聞き取り調査をおこなうことは難しいと判断される。それゆえ、当初の聞き取り調査の計画を修正し、デジタル技術と都市管理の権力について、文献を中心に整理し、それを学会発表と出版をとおして還元する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大によって、出張を行うことができず、謝金を必要とする聞き取りや入力作業が不要になったため、次年度使用額が生じた。今年度も出張が可能な状況になるかどうか不明であり、出張が可能の場合は旅費として使用する。不可能や難しい場合は、書籍の購入費と、英語論文執筆に際しての校正費として使用する。
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